権利関係

法定地上権をわかりやすく徹底解説!

法定地上権をわかりやすく徹底解説

地上権とは?

不動産投資や土地の貸し借りで、地上権という言葉を耳にすることはありませんか?

地上権とは、他人の土地において工作物や竹木を所有するために他人の土地を使う権利のことを指します。

土地や建物には様々な権利が設定されていて、その中でも代表的なのが所有権借地権です。

所有権と借地権が一体何を指しているのか見ていきましょう。

所有権と借地権の違い
所有権 土地や建物を自由に使用したり貸して収益を上げたりできる権利
借地権 他人が所有している土地を借りて建物を建てたりする権利

借地権を更に細かく分類すると、地上権と賃借権の2つの権利にわけられます。

民法第265条では、「地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。」と規定されていました。

参考:民法第265条(WIKIBOOKS) https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC265%E6%9D%A1

地上権を取得した人は地上権者と呼ばれ、地主の承諾なしで工作物や竹木を所有して第三者に売買したり譲渡したりできます。

地上権のような物権は、他人から借りた人も地主と同じように行使できるわけですね。

借地権や賃借権と、どう違う?

上記の項目で解説した通り、地上権は借地権の一種です。

土地を借りる権利の借地権は、地上権と賃借権に分類できます。

賃借権は貸借契約を結んだ際に取得できる借主側の権利で、次の2つが地上権との共通点です。

  • 建物を所有する際は借地借家法の適用があり、借主の権利が保護される
  • 建て替え等の諸条件は契約次第で、いずれも合意によって定められる

どちらも借りた土地に建物などを建てられる点では一緒ですが、地上権と賃借権には下記の違いあり!

項目 地上権 賃借権
権利 物権(物に対する権利) 債権(人に対する権利)
登記 地主に登記義務があるため登記される 通常は登記されない
譲渡 地主の承諾は不要 地主の承諾が必要
地代 かかる場合が多い 基本的にかかる
借地借家法 適用あり 適用あり
抵当権 地上権そのものに設定できる 土地賃借権には設定できない
存続期間 自由に設定できる(建物所有が目的なら最短30年) 20年以下(借地借家法適用なら最短30年)

地上権は物権で物や権利を直接に支配する権利の一種なのに対して、賃借権は債権で特定の人が他の者に対して特定の行為を成すことを請求できる権利です。

同じ借主でも、地上権を有するケースと賃借権を有するケースとではできることの範囲や自由度が変わりますよ。

地上権と賃借権のどちらにするのかは、土地の所有者と土地を借りる人の合意で決められるのが一般的です。

法定地上権とは?

地上権には、以下のような特別な地上権があります。

  • 区分地上権:地上や地下の空間の一定の範囲を目的に設定される地上権
  • 法定地上権:競売等により土地と建物の所有者が別々になってしまった場合、法律上当然に、土地の所有者でなくても土地を利用できる権利

法定地上権のお陰で、建物のみを所有している人も建物に住んだり賃貸に出したりと有効活用できます。

以下では、具体例を挙げて法定地上権の仕組みをまとめてみました。

  1. Aさんは銀行からお金を借りて土地を購入して家を建てた
  2. 銀行はお金を貸す際に土地と建物に抵当権を設定した
  3. Aさんが銀行に返済できなくなり、土地を競売にかけることになった
  4. 土地だけが売れたため、土地の所有者はBさん、建物の所有者はAさんになった

建物だけを所有することになったAさんは、土地を使う権利を得ていません。

しかし、法定地上権の法律が設定されていることにより、こういった売買が行われた時にAさんはその土地を利用できる権利が認められます。

一般の地上権と法定地上権は、どう違う?

一般の地上権では、土地の所有者と建物の所有者が話し合いによって設定します。

一方で法定地上権は競売の実行で地上権が成立しますので、当事者の意思とは無関係で合意も不要ですね。

民法第388条では、法定地上権について「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。」と規定されていました。

参考:民法第388条(WIKIBOOKS) https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC388%E6%9D%A1

両者の合意が必要なのかどうかが一般の地上権と法定地上権の違いになります。

法定地上権の成立要件は4つ!

法定地上権の成立には、次の4つの要件を満たす必要があります。

  • 抵当権を設定した当時に既に建物が存在していた(土地に抵当権を設定してから建物を建てて競落されても法定地上権は成立しない)
  • 抵当権の設定当時に土地と建物の所有者が同じだった(異なる所有者の場合は当初から賃借権や地上権が設定されている)
  • 土地と建物のどちらか一方または双方に抵当権が設定されている(強制競売や公売の場合はこの限りではない)
  • 競売の結果、土地と建物の所有者が別々になった(所有者が同じならこのような権利を認めなくても良い)

細かい要件を全て満たすことで法定地上権が成立するわけです。

将来的に競売が行われた時に、双方とも法定地上権が成立することを予測できます。

つまり、法定地上権が成立したとしても、不測の不利益を受けることはありません。

法定地上権が成立しても明け渡し請求できるケースとは?

法定地上権が成立すると最低30年、その後も更新で10年と延々に地上権が存続します。

以下では、法定地上権が成立しても明け渡し請求できるケースをいくつか挙げてみました。

  • 地代を長期滞納している:長期間に渡って地代を滞納すると地主は地上権設定契約を解除できるため、土地所有者は建物所有者に建物収去土地明け渡し請求ができる
  • 双方の合意で解除した場合:最低30年間存続する法定地上権は自由に条件を設定できるため、建物所有者と土地所有者の合意で設定を解除して土地の明け渡しを要求できる
  • 法定地上権の期間の満了で更新しなかった:法定地上権の期間終了時に更新しなければ消滅する(更新の拒絶には正当事由が必要)
  • 建物が酷く老朽化している:建物の老朽化や滅失で契約途中でも地上権が解除されて、建物所有者に収去させて土地を明け渡してもらえる

土地所有者が建物所有者に対し、建物収去や土地の明け渡しを請求することはできます。

土地所有者からの一方的な明け渡し請求は不可能ですが、上記のような条件を満たしていれば大丈夫です。

法定地上権の判例

このページでは、法定地上権に関する判例をいくつか紹介していきます。

<土地にのみ抵当権が設定されて建物を取り壊して再築したケース>
事案:土地や建物の所有者が土地に抵当権を設定した後に、建物を取り壊して再築した
判例:旧建物のために同一の範囲内において法定地上権が成立する(大判昭10.8.10)

<抵当権設定当時に土地と建物の所有者が別人だったケース>
事案:抵当権設定当時において土地や建物の所有者が異なっていた
判例:前述の成立要件(2番目)を満たさないため法定地上権は成立しない(最判昭44.2.14)

参考:法定地上権に関する判例 https://gyosyo.info/%E6%B3%95%E5%AE%9A%E5%9C%B0%E4%B8%8A%E6%A8%A9/

法定地上権のよくある質問

以下では、法定地上権のよくある質問と回答を解説していきます。

Q1:法定地上権が成立した後に地代はどうやって決まりますか?
A:法律によって認められているのは地上権の設定までです。つまり、地代は土地と建物の所有者が話し合いで決めないといけません。

Q2:建物のみに抵当権が設定された後に土地が譲渡された場合にも法定地上権は成立しますか?
A:建物に抵当権が設定された当時に土地と建物が同じ所有者のものだったのであれば、抵当権実行前に土地と建物が別々の所有者のものとなっていても法定地上権は成立します。(大審院・昭和8.3.27)

まとめ

地上権と賃借権の違い、法定地上権の概要についておわかり頂けましたか?

法定地上権について理解するには専門的な知識が欠かせません。

宅建試験でも民法の法定地上権は重要ですので、事例や判例を踏まえてしっかりと頭に入れておいてください。

その他、以下のワンポイントWebテキストも参考にしてみてください。