権利関係

背信的悪意者を分かりやすく! 背信的悪意者排除論についても解説!

背信的悪意者とは?

背信的悪意者とは?

法律の世界では、「善意」「悪意」という言葉が登場します。

善意とは事情を知らないこと、悪意とは事情を知っていることを意味する言葉ですね。

背信的悪意者とは、故意に人を苦しめるような悪だくみをしている人のことを指します。

単なる悪意だけではなく、事実を知っていた上で信義に背くような行為です。

「背信的悪意者=他人を苦しめるような目的の人」と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

背信的悪意者の概要

背信的悪意者は、判例上は下記の者に当てはまると定義されています。

「実体上物権変動があった事実を知りながら当該不動産について利害関係を持つに至ったものにおいて、その物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある」

具体的にどのような場合に背信的悪意者となるのか基準をまとめてみました。

  • 相手が事実を知っていながらわざと意地悪な気持ちを持って行動している
  • 悪意を持って何か他人に不利益が被るようなことをしたという事実がある

ただ悪意を持っているだけでは問題にならないため、背信的悪意者に当てはまることはありません。

善意と悪意

日常生活で善意と悪意という言葉を使いますが、法律上では少し意味合いが違います。

上記の項目でも軽く解説しましたが、法律用語としての善意と悪意が何を指しているのか見ていきましょう。

法律用語としての善意と悪意
善意 ある事実を知らないこと、または信じたこと
悪意 知っていること、または信じていなかったこと

民法704条では、「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。」という条文があります。

参考:民法704条(悪意の受益者の返還義務等) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

これは法律上の原因がないことを知りながら、他人の財産や労務によって利益を受けて損失を及ぼした者と読みます。

法律を確認する際には、法律用語の意味に気を付けて条文を読まないといけません。

背信性や信義則について

背信性とは「信頼や約束を裏切ること」「信義にそむくこと」という意味合いで、民法では「信義則に反するもの」と定義されています。

信義則とは、権利の行使や義務の履行は信義に従い誠実に行わないといけないという原則です。

どのような場合に信義則を適用するのかは、具体的な事情に応じて決定するしかありません。

例えば、不動産仲介業会社では下記のように置かれた立場や社会的な信頼が考慮されます。

  • 直接の委託関係はなくとも、業者の介入に信頼して取引を成すに至った第三者一般に対しても信義誠実を旨とする
  • 権利者の真偽につき格別に注意する等の業務上の一般的注意義務があるとする

参考:信義則(信義誠実の原則)とは https://www.athome.co.jp/contents/words/term_2045/

民事訴訟法では当事者の訴訟行為に信義誠実義務を課していますが、背信性や信義則は別のより厳密な義務です。

民法177条における第三者とは?

民法177条の条文では、次のように規定しています。

「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」

参考:民法177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

民法177条における第三者とは、当事者とその包括承継人(その具体例としては相続人)以外の者です。

不動産取引に関して正当な利害関係を持っておらず、不動産物権変動の登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者が第三者になりますね。

具体例を挙げてみると、「譲受人」「差押債権者」「賃借人」「共有者」です。

背信的悪意者は第三者には当てはまりません。

背信的悪意者排除論とは?

背信的悪意者排除論とは、第三者は悪意でも保護されるが、悪意者が真の所有者の権利を害する目的でその登記の欠缺を主張する際に、信義に反していて認められないとされる理論です。

以下では、背信的悪意者排除論を具体的な判例を挙げて解説していきます。

  • 家がAさんから第三者に売られたことを知っているBさんがその家を購入する
  • 第三者は登記をしないと所有権をBさんに対抗できない
  • 信義則に反しない限りはBさんが知っていて二重譲渡をしても保護される

背信的悪意者排除論の論点は、第三者が故意に人を苦しめるような悪だくみをしている背信的悪意者として認められるかどうかです。

判例では背信的悪意者は第三者として認められていません。

背信的悪意者に関する判例を分かりやすく解説!

ここでは、背信的悪意者に関する判例を「元妻と妻への不動産二重譲渡事件」を例に挙げて解説していきます。

  • 悪意または背信性のない建物取得者の登記欠缺の主張が信義則違背、権利濫用であるとされた事例(神戸簡易裁判所昭和46年12月20日判決 判例時報669号93頁掲載)
  • 登記の欠缺を主張することができない背信的悪意者に当るものと認められた事例(神戸地方裁判所昭和48年12月19日判決 判例時報749号94頁掲載)

参考:背信的悪意者排除の理論と現実 https://www.web-nippyo.jp/15060/

この判例は、元内縁の妻と現在の妻への二重譲渡が問題になった事例です。

Xさんは内縁の夫Aさんと別れる際に本件建物を購入し、代金を支払って引渡しを受けて居住していました。

しかし、Xさんの移転登記請求に対してAさんは地主の印鑑がないと移転登記はできないと述べて応じず…。

その後AさんはYさんと結婚し、本件建物をYさんに贈与して移転登記をしました。

第1審と第2審ともにXさんが勝訴していますが、これは「Aさんの不当な目的」「Yさんの無関心」「AさんとYさんが結婚で経済的に同一である」という理由です。

Yさんが登記名義の取得につき悪意または背信性がなかったとしても、「登記欠缺の主張は信義則に反している」と考えられます。

背信的悪意者に関する宅建の過去問

宅建の試験では、背信的悪意者に関する問題が出題されます。

以下では、背信的悪意者に関する宅建の過去問を挙げてみました。

問い:A所有の甲土地についての所有権移転登記と権利の主張に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば正しいものはどれか?

  1. 甲土地につき、時効により所有権を取得したBは、時効完成前にAから甲土地を購入して所有権移転登記を備えたCに対して、時効による所有権の取得を主張することができない。
  2. 甲土地の賃借人であるDが、甲土地上に登記ある建物を有する場合に、Aから甲土地を購入したEは、所有権移転登記を備えていないときであっても、Dに対して、自らが賃貸人であることを主張することができる。
  3. Aが甲土地をFとGとに対して二重に譲渡してFが所有権移転登記を備えた場合に、AG間の売買契約の方がAF間の売買契約よりも先になされたことをGが立証できれば、Gは、登記がなくても、Fに対して自らが所有者であることを主張することができる。
  4. Aが甲土地をHとIとに対して二重に譲渡した場合において、Hが所有権移転登記を備えない間にIが甲土地を善意のJに譲渡してJが所有権移転登記を備えたときは、Iがいわゆる背信的悪意者であっても、Hは、Jに対して自らが所有者であることを主張することができない。

答え:4.Aが甲土地をHとIとに対して二重に譲渡した場合において、Hが所有権移転登記を備えない間にIが甲土地を善意のJに譲渡してJが所有権移転登記を備えたときは、Iがいわゆる背信的悪意者であっても、Hは、Jに対して自らが所有者であることを主張することができない。

参考:平成24年(2012年)問6 https://takken-success.info/24-6.html

背信的悪意者からの譲渡人であるJ(転得者)は、有効に権利を取得できます。

つまり、その者自身が背信的悪意者でない限りは、民法177条の「第三者」に当てはまるわけです。

背信的悪意者に関するよくある質問

このページでは、背信的悪意者に関するよくある質問を紹介していきます。

Q1:不動産が二重売買された時に、片方が背信的悪意者であれば転得者は善意悪意に関わらず保護されますか?
A:民法177条で定められている第三者は善意悪意を問いません。つまり、背信的悪意者からの転得者は、その者が背信的悪意者でない限り保護されます。

Q2:新たな権利の取得者が民法177条の第三者として保護を受けますか?
A:一般的にはその善意・悪意を問われませんが、登記を取得した第三者が背信的悪意者に当てはまる時は時効による権利取得の主張ができます。

【参考情報】背信的悪意者に関する参考書籍

背信的悪意者に関する情報の掲載されている書籍は下記の通りです。

『民法177条と背信的悪意者』:出版社名はジュリスト 民法の判例
『民法ノート 物権法1 第3版』:学説の新しい動向を反映させ新版化

まとめ

背信的悪意者とは一体何なのか、背信的悪意者排除論が何を指しているのかおわかり頂けましたか?

背信的悪意者に関する内容は、宅建の試験にも出題されます。

二重譲渡の関係の事例で頻出しますので、民法177条に関してはしっかりと押さえておきましょう。

その他、以下のワンポイントWebテキストも参考にしてみてください。

宅建試験関連については、下記の記事も参考にしてください。

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