権利関係

公序良俗違反とは、わかりやすく解説!公序良俗の範囲、反する表現や職業など

公序良俗とは?

公序良俗ってどういう意味?

宅建を勉強している方にはお馴染みの「公序良俗(こうじょりょうぞく)」という言葉。

あなたは公序良俗の正確な意味を説明できるでしょうか?

公序良俗の意味をわかりやすく解説すると、公共の秩序を守る常識的な考えや概念のことですね。

私たち人間は、常識や良識に照らし合わせたうえで、「NGだ」と思うことはしてはいけませんよね。

公序良俗は全ての法律の基本概念で、法の解釈や法の適用としても用いられています。

もし公序良俗に反する行為を行うと犯罪に繋がる恐れがあると心得ておきましょう。

公序良俗の使い方

「公序良俗ってどんな時に使うの?」と疑問を抱えている方のために、公序良俗の使い方(例、例文)をいくつか挙げてみました。

  • バクチや賭け事をする場所として家を貸すなんて、公序良俗の面から言ってもダメ
  • 確かに法を犯したわけではないけど公序良俗からしてアウトだと思う
  • 離婚前提で結婚するのは公序良俗から言って間違っている
  • 公序良俗で他人に迷惑をかけると責任が問われるよ

公序良俗は「公の秩序又は善良な風俗」の略語です。

国家の秩序と利益とは抽象的な表現ですが、分かりやすくいえば、国民が公序良俗を守ることで、我が国において社会生活のための秩序が守られることになります。

公序良俗の類語

公序良俗には下記のようにいくつかの類語があります。

公序良俗の類語
人道 人道にもとる行為や人道上の問題の意味。公序良俗よりも厳しい(キツい)表現といえる
世道人心 社会道徳、および、その道徳を守る人間の心を意味している
社会秩序 社会が混乱なく営まれている状態、そのための仕組み
法的秩序 法律によって社会が規律されて秩序が保たれている状態

正しいとされる行動を取るために守るべき事柄という点で公序良俗の類語関係になるわけです。

公序良俗違反とは、わかりやすく解説

「公序良俗違反」とは、常識から逸脱したような行為を行うことに対する言葉です。

「公序良俗に反する」と使うこともあり、法律に触れる犯罪行為に加えて社会通念から考えておかしいと思う場合にも用いられます。

※つまり「公序良俗違反が、すべて犯罪になるとは限らない」ということです。

上記の類語でも解説しましたが、「公序良俗違反」は「人道に反する」と言い換えることもできます。

「人道に反する」はモラルや倫理的に良くないとされることを指していますので、「公序良俗に反する」よりも多少強いニュアンスになるでしょう。

公序良俗の範囲

漠然と「公序良俗違反」と言っても「どこまでがOKで、どこからがNGなのか」が分かりにくいですよね。

一般的な基準としては、以下3つの観点から検討します。

  1. 財産秩序に反するもの
  2. 倫理的秩序に反するもの
  3. 自由および人権等を侵害するもの

それぞれについては、下記の弁護士事務所の説明が分かりやすいと思います。

①財産秩序に反するものとは、例えばネズミ講のように犯罪性のあるもの、賭博など射幸性の高いもの、などが例として挙げられます。裁判では、ホステスに客の飲み代のツケを保証させるシステムを公序良俗違反としたものもあります。

②倫理秩序に反するものとは、例えば売春契約や妾契約のようなものです。
また、不倫相手に「妻と別れて、君と結婚するよ」と約束したといっても、それは公序良俗に反しますので、その約束を履行しないことを理由とした慰謝料の請求はできないこととなります。
裁判では、裏口入学をさせるとの契約が、公序良俗違反とされたことがあるようです。

③自由・人権を侵害するもの
これは、説明するまでもないように思いますが、基本的人権を侵害するような行為は、公序良俗違反となります。
雇用契約を締結するにあたって、男女を差別するような雇用契約とすることは、人権を侵害するものとして、公序良俗違反となるでしょう。

引用:流山法律事務所

 

「公序良俗違反」の例

具体的にどういった場面で「公序良俗違反」という言葉を使うのか、3つの例文を挙げていきます。

  • 「1,000万円支払うから、あの人を殺してくれ」と頼むのは「公序良俗違反」
  • 「宅建試験の替え玉を引き受けてくれたら10万円を支払う」と持ち掛けるのは「公序良俗違反」
  • 一時期は「公序良俗違反」のネズミ講まがいの商法がたくさん出現していた

何となく「公序良俗違反」の使い方についておわかり頂けましたか?

公序良俗に反する表現とは?

公序良俗違反は、芸術やエンターテイメントの世界でも良く話題になります。よく言われるのが、映画・漫画などでの性的表現や暴力的表現などです。

公益財団法人日本スポーツ協会では、公序良俗に反する表現として以下のような例示を挙げています。

<例>
・暴力、とばく、麻薬、売春などの行為を肯定、美化したもの。
・醜悪、残虐、猟奇的で不快感を与えるおそれがあるもの。
・性に関する表現で不快感を与えるおそれがあるもの。
・風紀を乱したり、犯罪を誘発するおそれがあるもの。

引用:公益財団法人日本スポーツ協会

民法における公序良俗

公序良俗違反は何条?

民法90条では、公序良俗について「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」と定めています。

参考:民法90条(神戸合同法律事務所) https://www.kobegodo.jp/LawyerColumn.html?id=328

この条文をわかりやすく言い換えると、「道徳に反するような法律行為(契約など)には効力は発生しない」という意味です。

民法において強行規定に違反する法律行為は無効ですが、強行規定に該当しない法律行為でも民法第90条で公序良俗に違反したという理由で法律行為が無効とされるケースがあります。

公序良俗と契約

公序良俗に反する契約とは、社会的に見て道徳や倫理に反する内容の契約を指しています。

仮に契約当事者が契約内容に合意しても、下記に当てはまる場合は契約内容通りの効果が認められません。

  • 公序良俗に反する場合
  • 特別法で規定された強行規定に反する場合

例えば、売買契約書に損害賠償額の予定を規定した際に、賠償額が著しく高額だった時は公序良俗違反に該当するため契約上の一部の条項が無効になります。

上記は暴利行為に該当するため、「賠償額の予定」の全部または一部が無効になるわけです。

「公序良俗に反するか否か」については、「社会的に見て妥当か」という点が判断をする基準になるといえます。

公序良俗違反で契約が無効になる例

海外ドラマ等の中では「金銭を報酬として、人を殺害する」という設定は良くありますが、実際に起こったとしたら大問題ですよね。

前述の「人を殺したら100万円あげる」という契約は公序良俗に反するものであり、契約自体が無効となります。

つまり、「殺して」と依頼した方が実行犯に100万円を払う必要はありませんが、実行犯が本当に殺人を犯してしまったら、依頼した方も共犯(場合によっては主犯)になってしまいます。

そもそも、お金を支払って殺害が許されるのは、自分もいつか誰かに殺されるかもしれないということに繋がりますよね。

つまり、社会通念や常識上、許したり認めたりすることができない内容の法律行為のことを、公序良俗に反する法律行為というわけです。

その他にも、公序良俗違反で無効となる契約の例としては、暴利行為(高利貸し)・人間の倫理に反する行為(愛人契約)・人権侵害を助長する行為(男女の待遇を差別化する労使(雇用)契約)などがあります。

特許法における公序良俗

特許法とは、発明の保護や利用を図って発明を奨励し、産業の発達に貢献することを目的に作られた法律です。

特許を受けるには発明について特許庁に特許出願をし、更に一定の審査をクリアしないといけません。

特許法第32条では公序良俗について下記のように定めています。

「産業上利用することができるような発明であっても、公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生(以下この章において「公序良俗等」という。)を害するような発明について、特許を受けることができないことを規定している」

引用:不特許事由(特許法第32条) https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/document/index/03_0500.pdf

条文をかみ砕いて解説すると、公の秩序や公衆の衛生など公序良俗を害する発明はいかなるものでも特許の対象外です。

ただし、特許法は発明内容の安全性や質について保証する内容ではありませんので、公序良俗に反することが明らかな場合のみ特許を受けられないと決められています。

公序良俗の判例

以下では、宅建と深く関わる公序良俗に関する判例を挙げてみました。

  • 一人暮らしの高齢者(87歳)が居住中の土地や建物を売却しようとした
  • 売却代金として、分割で支払われる代金や生活保護費等を受け取ることが出来、死ぬまで居住できると勧誘された
  • 締結した土地建物売買契約の無効を訴えた事案で当該売買契約が公序良俗に反して無効とされた

参考:詐欺的勧誘を受けて土地建物を売却した高齢者の売買契約が公序良俗に反して無効であるとされた事例 https://www.retio.or.jp/case_search/pdf/retio/99-64.pdf

こちらの高齢者が行った取引は、詐欺的な勧誘で居住する土地建物の所有権を取得して転売益を得ようとしたものでした。

いくら業者から勧誘されようとも、不正・不当な取引なのは明確です。

つまり、公序良俗に反する契約ですので、売買契約自体を無効とした判決は妥当だと言えます。

Q&A~公序良俗関連

ここでは、公序良俗に関するよくある質問をいくつか紹介していきます。

丙が移転登記を受けるに当たり、甲乙間の売買の契約が公序良俗に反していたため無効、という事実について善意の(知らなかった)場合、なぜ丙は甲に土地の所有権を対抗できないのですか?

A:「甲」⇒「乙」⇒「丙」と売買が行われて丙が登記を備えるとと、丙が所有権を取得します。公序良俗に反して無効な行為は全て第三者に対抗できるため、丙は所有権を主張することができません。

【参考情報】公序良俗に関する参考書籍

公序良俗の情報について更に詳しく知りたい方のために、おすすめの参考書籍を紹介していきます。

『公序良俗入門』:現代日本の公序良俗とは何なのか、民法や商法、憲法や刑法の判例を取り上げて分析している
『公序良俗違反の研究―民法における総合的検討』:公序良俗と他規定との関係やドイツ法におけ良俗論と日本法の公序良俗について書かれている
『公序良俗と契約正義』:日本の「給付の均衡」法理の受入過程をフォローし、判例における暴利行為論の適用状況を検討している

まとめ

公序良俗とは一体何なのか、公序良俗に反するとどうなるのかまとめました。

妥当ではない行為を取り締まって法律の正当性や妥当性を守る目的で公序良俗は定められています。

公共の秩序を守るための常識的な観念ですので、私たちが生きていくに当たって欠かせないものだと言えるでしょう。

著者情報
氏名 西俊明
保有資格 中小企業診断士 , 宅地建物取引士
所属 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション