権利関係

抵当権とは?わかりやすく民法の抵当権を解説!

抵当権をわかりやすく説明

抵当権とは?

不動産取引を行う際に、「抵当権(ていとうけん)」という言葉が良く出てきます。

抵当権とは、わかりやすく説明すると住宅ローンでお金を借りたり借り換えしたりする際に、購入した土地や建物に設定される権利のことです。

債務者(借りた側)の住宅ローンの返済が滞った時に、あらかじめ不動産を担保にしておきます。

抵当権と住宅ローンの関係性は下記の通りですね。

  1. 債務者が金融機関から住宅ローンの融資を受ける
  2. 担保として購入予定の土地や建物を提供する
  3. 金融機関は当該土地や建物に対して抵当権を設定する

不動産の一括購入や住宅ローンの完済では、抵当権の設定はありません。

抵当権の目的物

抵当権の目的物は建物や土地などの不動産です。

しかし、不動産と一体となっている建物以外のモノにも効力が及びます。

以下では、どのようなモノに抵当権が及ぶのかいくつか挙げてみました。

抵当権が及ぶモノ
付加物 不動産から取り外しが困難な石垣や立木など
従物 不動産の所有権に属さないエアコンや畳など
果実 抵当権のついた不動産で自然に産出される果物や野菜

1つの債権を確保するために、複数の目的物に抵当権を設定できます。

被担保債権とは?

被担保債権とは、担保の対象になった債権を指します。

上記の項目で解説した通り、金融機関から住宅ローンを借りる際は返済が滞る場合に備えて土地や建物を担保とする抵当権を設定するのが一般的です。

抵当権で保証される債権、つまり金融機関が貸している住宅ローンが被担保債権に当たります。

抵当権者とは?

AさんがBさんに対して債権を有している場合に、債権を保全する目的で所有する財産に対して抵当権を設定したとします。

抵当権を設定したAさんが抵当権者です。

住宅ローンの融資を受ける場合を例に挙げてみると、金融機関や保証会社が抵当権者になります。

抵当権設定者とは?

上記の例でAさんが抵当権者なのに対して、Bさんは抵当権設定者と呼ばれます。

住宅ローンの融資を受ける場合では、自身の所有する不動産に抵当権を設定する債務者が抵当権設定者ですね。

物上保証人とは?

物上保証人とは、自分以外の人の債務を自分の財産で保証した人のことを指します。

たとえば、金融機関Aが債権者、お金を借りるBさんが債務者の場合で、Bさんが担保となるものを持っていない場合、Bさんのお父さん(Cさん)の土地を担保に入れるようなケースが該当します。

抵当権の設定では、債務者以外の第三者が自身の不動産を担保に提供するケースは少なくありません。

その第三者が物上保証人と表現されますよ。

抵当権の対抗要件

抵当権は、設定登記で対抗要件を備えて第三者に対する対抗力が生じます。

抵当権の登記の登記事項に関しては、不動産登記法83条1項で定められていました。

参考:不動産登記法83条1項(e-GOV) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123

抵当権について登記をしていないと、効力を第三者に対抗できません。

「対抗できない」=「主張できない」という意味合いです。

しかし、抵当権を設定した本人や物上保証人に対しては、登記なしでも抵当権を対抗できます。

抵当権の性質

宅建試験に出題される民法では、抵当権に関する問題も出ます。

抵当権には、「付従性」「随伴性」「不可分性」「物上代位性」の4つの性質あり!

それぞれが一体何を指しているのか見ていきましょう。

抵当権の付従性

抵当権の付従性(ふじゅうせい)は、被担保債権の消滅で抵当権が同時に消滅することです。

例えば、AさんがBさんから3,000万円を借りて、購入予定の家に抵当権を設定したとします。

3,000万円を借りる契約が勘違いで無効になった場合、抵当権も成立しなかったことになるわけです。

わかりやすく解説すると、担保の対象になった被担保債権が存在しなければ抵当権も存在しません。

抵当権の随伴性

抵当権の随伴性(ずいはんせい)は、被担保債権の譲渡で抵当権が一緒に移転することです。

AさんがBさんから3,000万円を借りて自分の家に抵当権を設定し、その後にBさんが債権をCさんに譲渡したとします。

そうすると随伴性により、Aさんの抵当権がBさん⇒Cさんに移転する仕組みですね。

つまり、AさんはCさんに対して借金の返済をしないといけません。

しかし、抵当権の随伴性は民法398条で、「例外として根抵当権は元本の確定前においては随伴性を有さない」と定めています。

参考:民法第398条(WIKIBOOKS) https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC398%E6%9D%A1

抵当権の不可分性

抵当権の不可分性(ふかぶんせい)は、債権の一部が消滅しても効力が目的物全体に及ぶという性質です。

例えば、AさんがBさんから3,000万円を借りて、300㎡の土地に抵当権を設定したとします。

仮にAさんがBさんに2,900万円までお金を返しても、抵当権が290㎡分に対して消滅するわけではありません。

債権を完済するまで、300㎡の全てに抵当権が課されるのが不可分性の性質です。

抵当権の物上代位性

抵当権の物上代位性(ぶつじょうだいいせい)は、目的物の損傷や滅失で受け取るべき金銭に対しても行使できる性質を指します。

以下では、抵当権の物上代位性を具体例を挙げてまとめてみました。

  1. AさんがBさんから3,000万円を借りて自分の家に抵当権を設定した
  2. Aさんの家が火事で焼失し、火災保険によって保険金が下りた
  3. Bさんはその保険金を差し押さえて弁済に充てられる

ただし、どの部分が物上代位の目的なのか区別するために、払い渡しや引き渡しの前に差し押さえをしないといけません。

抵当権の順位の変更

抵当権者が複数いる際に、抵当権者の間で順位を入れ替えることを「抵当権の順位の変更」と言います。

「1番抵当権」「2番抵当権」と順位を変更することにより、優先弁済される順番が変わる仕組みです。

抵当権の順位を変更するには、次の3つの要件を満たさないといけません。

  • 順位変更する抵当権者全員の合意がある
  • 利害関係人の承諾がある
  • 順位変更の登記を行う

抵当権者全員の申請で登記を行い、はじめて効力が生じます。

抵当権の効力が及ぶ範囲

抵当権の効力が及ぶ範囲は、民法第三百七十条で「抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。」と定められています。

参考:民法第三百七十条 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089#1260

担保に取った不動産だけではなく、付属している物や権利も対象です。

ただし、土地と建物は別々の独立した不動産として見なされるため、土地の抵当権が建物に及ぶことはありません。

被担保債権の範囲

被担保債権の範囲は、元本および満期となった最後の2年分の利息や遅延損害金です。

抵当権で担保されるのは、「元本」「2年分の利息」になります。

2年を超える利息に関しては抵当権で担保されません。

法定地上権

地上権とは、自分が借りた土地を自由に使える権利です。

もし、マイホームを建てても、土地を使う権利がなければ大変なことになってしまいますよね。家は自分の持ち物でも、土地を使わない訳にはいきませんから不法占拠者として扱われてしまいます。

実は、マイホーム(土地および建物)に抵当権を設定した場合、ローンが返せなくて抵当権が実施されると、土地と建物が別々の所有者になることが多々あるのです。

たとえば以下のようなケースです。

  • AさんはB銀行から住宅ローンを借りて、土地付きマイホームを購入した
  • しかし、Aさんは住宅ローンを払えなくなり、B銀行は抵当権を実行してAさんのマイホームを競売にかけた
  • Aさんのマイホーム(建物)はC社が競り落とし、土地はD社が競り落とした

このような場合、マイホーム(建物)を手に入れたC社は、地上権がなければ不法占拠者になってしまうので、土地の所有者のD社から「出て行ってくれ」と言われてしまいますよね。

そんなことにならないよう、一定の条件を満たす場合に、「法律上当然に地上権が設定される」=「法定地上権」が認められるようになったのです。

法定地上権が認められる条件は以下のとおり。

  • 抵当権を設定した時に、すでに土地の上に建物があったこと
  • 抵当権を設定した時に、土地と建物の所有者が同一であったこと
  • 競売により、土地と建物の所有者が別々になってしまったこと

抵当権の実行で別々の持ち主になった時に発生する法定地上権のお陰で、建物しか所有していなくても自分が住んだり賃貸に出したりできるのです。

法定地上権について詳しくは、下記の記事も参考にしてみてください。

法定地上権をわかりやすく徹底解説
法定地上権をわかりやすく徹底解説!地上権とは? 不動産投資や土地の貸し借りで、地上権という言葉を耳にすることはありませんか? 地上権とは、他人の土地において工作物...

 

一括競売

法定地上権はありがたい制度ですが、抵当権設定時に土地しかなく、その後、建物を建てた場合には、法定地上権の対象となりません。

そのような時のための制度が一括競売です。

一括競売とは、土地に対して抵当権を設定して抵当地に建物を建てた場合に、土地抵当権者が土地と建物の両方を一括で競売できる権利です。

土地だけを競売して売れてしまうと、その上の建物は取り壊しの対象となってしまうことが多いのですが、それは勿体ない話ですよね。

そこで、土地にのみ抵当権を設定している場合でも、債権者(抵当権者)は土地と住宅を一括競売できる制度が誕生したのです。

そして土地と建物が売れた場合、抵当権者は土地の代価について郵船弁済を受けることができ、建物の代金は所有者に渡されることとなります。

 

第三取得者を保護する制度

第三取得者とは、抵当権が付いている不動産をそのままの状態で取得した者を指します。

債務の返済ができなくなった時に債権者はいつでも抵当不動産を任意競売にかけられますが、第三取得者は所有権を喪失して損害を受ける危険性があります。

この第三取得者を保護する制度として、「代価弁済」と「抵当権消滅請求」の2つの仕組みができました。

代価弁済

代価弁済は、抵当権を消滅させる制度の一つです。

抵当権が付いている不動産が第三者に譲渡された際に、抵当権者の請求に応じて代金を売主ではなく抵当権者に支払うことで抵当権を消滅させられます。

抵当権消滅請求

抵当権消滅請求も代価弁済と同じで、抵当権の消滅を請求する制度です。

抵当権が付いている不動産を取得した第三者は、自分で指定した金額を抵当権者(金融機関等)に弁済すると抵当権の消滅を請求できます。

抵当権と賃借権の関係

賃借権とは、賃貸借契約で得られる借主の権利です。

建物を借りた借主は契約の範囲内で目的物を使用できますが、貸主に賃料を支払わないといけません。

抵当権と賃借権の優先関係は、抵当権設定登記と賃借権登記で決まります。

抵当権者の債権者Bさんがアパート経営者Aさんにお金を貸し、Aさんの所有するアパートに抵当権を設定したとします。

Aさんのアパートの貸借人Cさんは、抵当権設定前に賃借権の登記をしていれば、Bさんが抵当権を実行してアパートが競売されても、Cさんは新しいアパートの所有者(競売の買受人)に対抗できます。

一方、賃借権の登記がない、あるいは抵当権より後の場合は、Cさんは買受人に対抗できず、アパートを明け渡す必要があります。

建物明渡猶予制度

建物明渡猶予制度は、民法の改正で2004年に創設されました。

不動産に抵当権が設定された際に、抵当権設定登記がなされた後の賃貸借は全て抵当権に劣後するのが原則です。

しかし、建物明渡猶予制度では抵当権に対抗できない賃貸借において、抵当権の実行で競売がなされた時に競落人の買受の日から6ヵ月間に限り不動産を明け渡さなくて良いと決められています。

建物明渡猶予制度が適用されるのは、賃借人が競売手続きの開始前から賃借している者に限られます。

まとめ

不動産取引で出てくる民法の抵当権がどのような制度なのかおわかり頂けましたか?

抵当権の設定により、貸したお金が返済されない時に不動産を強制的に売却してお金を回収する権利があります。

「抵当権」「不動産登記法」「不法行為」は宅建試験で毎年出題される問題ですが、ややこしくて中々得点できないことが多いので注意しましょう。

その他、以下のワンポイントWebテキストも参考にしてみてください。