権利関係

民法の意思表示とは?宅建の権利関係を分かりやすく解説!

意思表示について

意思表示とは?

宅建試験の権利関係とは、不動産取引における当事者の「権利の取得や移動に関係すること」を学ぶ科目です。

例年の内訳は、「民法(10問)」「借地借家法(2問)」「不動産登記法(1問)」「建物区分所有法(1問)」ですので、宅建試験の権利関係では民法を重点的に学習しないといけません。

意思表示とは民法に出てくる内容で、売買契約や遺言など権利・義務に関する法律上の効果を生じさせるために、意思を外部に表示する行為を指します。

意思表示の通りの効力を生じるには、「内容が確定できる」「違法ではない」「公序良俗に反しない」といった条件が必要です。

民法における意思表示は、次の2つの要素から成り立っています。

  • 一定の法律効果を欲する意思の「効果意思」
  • 効果意思を外部に表現する行為の「表示行為」

2つのいずれかが欠けていると意思表示は成立しません。

意思能力(民法第3条の2)とは?

民法第3条の2では、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」と定められています。

参考:民法第3条の2(WIKIBOOKS) https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC3%E6%9D%A1%E3%81%AE2

わかりやすく解説すると、意思能力は行為の結果を判断するに足りるだけの能力ですね。

例えば、「10歳未満の幼児」「重い精神病や認知症を持つ」「泥酔者」といった者は意思能力がないと見なされます。

判断能力の低下した高齢者を巡るトラブルの増加により、民法が改正されて第3条の2が新設されました。

詐欺・強迫(民法第96条)

民法第96条では、「詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。」と定められています。

参考:民法第96条(WIKIBOOKS) https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC96%E6%9D%A1

詐欺や強迫が民法においてどう定義されているのか見ていきましょう。

詐欺とは?

詐欺とは、他人を騙して金品を奪ったり損害を与えたりすることで、近年では振り込め詐欺の被害に遭う方が増えました。

詐欺の要件は次の3つです。

  • 相手方に一定の意思表示をさせようとする意志で相手を欺く
  • 欺罔(ぎもう)行為(相手を欺く行為)がある
  • 相手が欺罔行為で錯誤に陥り、騙した相手が意図した意思表示をする

他人を欺く行為は詐欺罪に当たりますので、詐欺による意思表示は取り消すことができます。

詐欺の場合における第三者との関係

詐欺における第三者との関係においては、「詐欺による意思表示した本人と、詐欺の取引のあとに不動産などを取得した第三者のどちらを保護するべきか?」という点が問題になります。

不動産取引を例に挙げてみると、「AさんがBさんの詐欺で土地の売却を行う」「取得した土地をBさんがCさんに転売する」という状況では一体どうなるでしょうか?

Cさんは、実際には権利のないBさんから土地を購入していますが、この場合、Cさんが善意無過失であれば、AさんはAB間の土地売買の取引を詐欺を理由に取り消すことはできません。

ここでいう「善意」とは「事情を知らない」という意味です。逆に「悪意」とは「事情を知っている」という意味になります。一般的な「善(良いこと)」と「悪(悪いこと)」の意味はありませんので注意してください。

「Bさんによる詐欺にあって土地を売ってしまったAさんは保護されないの?」

と思うかも知れませんが、まったく事情を知らないCさんには全く落ち度はありません。

Aさんも可哀そうですが、「詐欺に合ったということは、何かしら付け込まれる隙があったのでは」と民法では考え、善意(事情を知らない)かつ無過失(落ち度がない)Cさんの保護を優先することになります。

もちろん、Cさんが悪意(事情を知っていた)あるいは有過失(落ち度があった場合には、詐欺によるAB間の取引を取り消すことができます。

強迫とは?

強迫とは、相手方に恐怖心を生じさせる目的で生命や財産に害悪を加える旨を告知することを指します。

例えば、「お前を殺してやる」「家族を痛い目にあわせるぞ」「ネットで裸の写真をばらまくぞ」など、相手に恐怖を与える言動ですね。

害悪の告知方法は口頭やメールだけではなく、第三者を介する間接的な方法でも強迫が成立します。

強迫の場合における第三者との関係

強迫における第三者との関係においては、「強迫されて意思表示した本人と、強迫の取引のあとに不動産などを取得した第三者のどちらを保護するべきか?」という点が問題になります。

不動産取引を例に挙げてみると、「AさんがBさんに強迫されたため土地の売却を行う」「取得した土地をBさんがCさんに転売する」という状況では一体どうなるでしょうか?

この場合、詐欺と違って「Cさんが善意無過失でも、AB間の取引は取り消せる」ことになります。

詐欺の場合と違い、強迫を受けて土地を売ってしまったAさんには「まったく落ち度がない」と民法が考えているからで、Aさんは必ず保護されるのです。

ただし、強迫行為を受けても意思表示との間に因果関係がない場合は、意思表示を取り消すことはできません。

第三者による詐欺・強迫の場合は?

Aさんが第三者のCさんに詐欺または強迫を受けて、Bさんに土地を売ってしまったケースを考えてみます。

まず詐欺の場合ですが、Bさんが善意・無過失の場合に限り、Aさんは土地売買の契約を取り消すことができます。

一方、強迫の場合はBさんが善意無過失であっても、Aさんは問答無用で意思表示を取り消せることになります。

心裡留保(民法第93条)

民法第93条では、「意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。」と心裡留保について定められています。

参考:民法第93条(WIKIBOOKS) https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC93%E6%9D%A1

以下では、心裡留保の概要や無効になる要件についてまとめました。

心裡留保とは?

心裡留保(しんりりゅうほ)とは、本人の真意とは異なる内容を当人が外部に表示することを指します。

例えば、商品を全く買うつもりがないのに店員に対して「その商品を買います」と告げる行為です。

宅建の試験では、意思表示や無効と取消、代理で心裡留保が良く出てきます。

心裡留保が無効になる要件

心裡留保で交わされた売買契約は原則的に有効です。

民法において、冗談を言って契約した人を守る義理はありません。

しかし、契約の相手方が冗談を言った者の真意を知っているケースでは、心裡留保が無効になりますよ。

Aさんの嘘でBさんと契約し、Bさんが悪意または有過失だった場合はその契約が無効になる仕組みです。

心裡留保の場合における第三者との関係

上記の項目でも解説しましたが、心裡留保による意思表示で相手方が本人の真意を知っていると契約は無効です。

それでは、次のケースはどうでなるでしょうか?

  1. Aさんが冗談でBさんに「土地を売ってやる」といった。
  2. Bさんは、Aさんが冗談を言っていると知りながら、契約に応じた
  3. その後、BさんはAさんから手に入れた土地をCさんに販売した

上記の場合、BさんはAさんの心裡留保について悪意ですから、AB間の取引は無効です。

しかし、Bさんから土地を買ったCさんが善意無過失の場合は、Cさんを保護する必要があるので、AB間の取引は無効になりません。

つまり、相手方が悪意または過失があった場合でも、善意の第三者に対抗することはできないのです。

一方、Cさんが悪意または有過失の場合はAB間の取引は無効となります。

錯誤(民法第95条)

民法第95条では、「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。」と錯誤について定められています。

参考:民法第95条(WIKIBOOKS) https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC95%E6%9D%A1

錯誤とは一体何なのか、取り消しができる要件や第三者との関係についても見ていきましょう。

錯誤とは?

錯誤(さくご)とは、「あやまり」「間違い」「事実と観念とが一致しない」ことを指します。

民法においては表意者が無意識に意思表示を誤り、推定の意思内容と真の意志内容との食い違いを表意者が認識していない状態です。

意思表示以前の動機に錯誤が生じることは「動機の錯誤」とされています。

錯誤による取り消しができる要件

以前の民法は錯誤の効果は無効とされていましたが、改正によって「無効」⇒「取り消し」に変わりました。

錯誤による取り消しができる要件は次の3つです。

  • 意思表示に対応する意思を欠くこと
  • 表意者が法律行為の基礎とした動機について、その認識が事実と異なる錯誤(ただし、動機が法律行為の基礎とされていることが表示されている必要があります)
  • その錯誤が法律行為の目的及び社会通念に照らして重要なものであること

ただし、表意者に重大な過失があると錯誤の取り消しは認められません。

錯誤の場合における第三者との関係

錯誤における第三者保護とは、錯誤による意思表示の取り消しは善意かつ過失のない第三者に対抗できないという定めです。

原則として、表意者(錯誤した本人)は重大な過失がなければ錯誤の取り消しを主張できます。

しかし、錯誤を理由として取り消す前に善意無過失の第三者が登場すると、その第三者には対抗できません。

虚偽表示(民法第94条)

民法第94条では、虚偽表示について「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。」と定められています。

参考:民法第94条(WIKIBOOKS) https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC94%E6%9D%A1

虚偽表示とは何なのか、第三者との関係についても見ていきましょう。

虚偽表示とは?

虚偽表示(きょぎひょうじ)とは、不当な利益の獲得などの目的の者が相手方と共謀して行う意思表示です。

AさんとBさんが土地の売買契約を締結するつもりがないのにも関わらず、お互いに相談して売買契約を締結したかのように見せかける行為が虚偽表示に当たります。

お互いに通じた上で行う虚偽の表示ですので、通謀虚偽表示と呼ばれることも少なくありません。

虚偽表示の場合における第三者との関係

民法では虚偽表示の場合における第三者保護の規定として、「前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。」と定めています。

上記の例では、AさんとBさんの土地売買契約は無効で、「所有名義をAからBに移した」という行為は虚偽表示に該当します。

しかし、AB間の土地売買契約の無効は、善意のCさんに対して主張することができません。

第三者保護の規定により、Cさんは問題の土地の所有権を有効に取得できるわけです。

公序良俗に反する法律行為(民法第90条)

民法第90条では、公序良俗について「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」と定めています。

参考:民法第90条(WIKIBOOKS) https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC90%E6%9D%A1

わかりやすく解説すると、常識的に考えてダメだと思うことはしないという意味ですね。

公序良俗に反する法律行為は、当然のように無効になります。

おかしな法律を取り締まって正当性や妥当性を守るために、民法第90条が制定されました。

【参考1】条件と期限

法律の世界では、条件と期限という言葉が出てきます。

一定の事実の発生によって効力が発生したり消滅したりする点では同じですが、条件と期限の正確な意味合いには次の違いあり!

  • 条件は、将来発生することが不確実な事実の成否にかからせる
  • 期限は、将来発生することが確実な事実の成否にかからせる

将来において確実に発生するのかどうかで、条件なのか期限なのか変わります。

例えば、「あと1年経ったら結婚してあげる」という内容は、確実に1年の経過が発生するので法律的には期限です。

「宝くじが当たったら欲しい物を買ってあげる」という内容は、宝くじの当選が確実に発生するとは言えないので条件に当てはまります。

停止条件と解除条件の違い

不動産取引において、停止条件と解除条件が出てきます。

停止条件と解除条件が一体何を指しているのか、意味合いの違いをまとめてみました。

停止条件と解除条件の違い
停止条件 契約を停止させている条件
解除条件 条件の成就で契約などの法律行為が解除される条件

停止条件では契約を停止させている条件がなくなると法的効力が発生するのに対して、解除条件は条件を満たすことで法的効力が消滅します。

【参考2】無効と取消

法律的には、無効と取消には次の違いがあります。

無効と取消の違い
無効 法律行為の効力をはじめから発生させないこと
取消 効力が発生して取消原因がある際に意思表示ではじめて無効になる

無効は最初から何もない、取消は成立したものをなかったことにするという意味合いですので、無効と取消は全く別の概念です。

まとめ

民法の意思表示や宅建の権利関係についておわかり頂けましたか?

意思表示は意思を外部に表示する行為で、「詐欺や脅迫では取り消すことができる」「虚偽表示では契約が無効になる」と法律で定められています。

宅建の試験で民法は重要な位置付けですので、似た用語の意味の違いをきちんと把握しておきましょう。

その他、以下のワンポイントWebテキストも参考にしてみてください。