権利関係

債務不履行と解除 ~宅建士試験・権利関係(民法)

債務不履行と解除

債務不履行とは

債務不履行とは、債務者がきちんと債務を遂行(履行)しないことです。

たとえば、AさんがBさんから自動車を買う契約をしたのに、約束の日になっても、BさんがAさんに自動車を引き渡さない場合、債務不履行となります。

債務不履行の類型

一口に「債務不履行」といっても、大きく分けて3つの種類(類型)があります。

・履行遅滞
・履行不能
・不完全履行

つまり、「履行が遅れること」「履行が出来なくなったこと」「履行したが、問題があったこと」の3パターンです。

これからについては、のちほど、それぞれ詳しくみていきます。

債務不履行の場合における、債権者の保護

民法では、債務不履行に合った場合、債権者は以下の3つの手段を取ることができます。

・履行の強制
・損害賠償請求
・契約の解除

これらについても、のちほど詳しくみていきましょう。

履行遅滞

まず、「債務不履行」の3パターンのうち、「履行遅滞」について説明します。

「履行遅滞」をざっくりと言えば「履行が遅れること」となります。

たとえば、Aさんが10月1日にBさんから自動車を引き渡してもらう約束だったにも関わらず、10月5日になっても、Bさんが自動車を引き渡さない、などのケースが該当します。

履行遅滞が正立する条件は以下のとおりです。

・履行が可能なこと
・履行期を過ぎたこと
・債務者に責任があり、それが違法であること

ただし、債務者が「同時履行の抗弁権」を主張できるときは、履行遅滞になりません。

上記の例でいえば、

「たしかに、10月1日にBさんはAさんに自動車を引き渡す約束をしていた。しかし、同日にAさんはBさんに代金100万円を支払う約束をしていたにも関わらず、Aさんは支払いをしなかった。そこで、やむを得ずBさんはAさんに自動車を引き渡さなかった」

などのケースの場合、同時履行の抗弁権が成り立ちます。

この場合、とてもBさんが一方的に悪いとは言えませんよね。

履行不能

つづいて「債務不能」です。これは、何らかの理由により、債務者が債務の履行ができなくなったことです。

たとえば、「引き渡す約束をしていた自動車が事故で全壊してしまい、引き渡せなくなった」などが該当します。

履行不能が成立する条件は以下のとおり。

・履行ができないこと
・債務者に責任があり、それが違法であること

不完全履行

不完全履行が成立するためには、以下の条件が必要です。

・不完全な履行があること
・債務者に責任があり、それが違法であること

履行の強制

ここからは、相手方(債務者)が債務不履行に陥った場合の、債権者を保護するルールについて見ていきます。

まずは「履行の強制」です。

債権者は民事執行法などの法令の手続きに従い、履行の強制を裁判所に請求することができます。

日本は法治国家なので、実力行使など、平穏ではない方法で、相手方に履行を強制することはできません。

すべての国民は自らの権利を強制的に実現するには、裁判所の手続を経なければならないのです。

これを自力救済禁止の原則といいます。

損賠賠償請求

債務者に債務不履行があり、それにより損害が発生している場合、債権者は「損害賠償請求」を行うことができます。

損害賠償請求は、通常生じる範囲の損害について、金銭(原則)で賠償請求することができます。

債務不履行をした債務者に対し、債権者は損害賠償請求と同時に「履行の強制」または「契約の解除」を請求することもできます。

ただし、「履行の強制」と「契約の解除」を同時に請求することできません。当然ながら、これらは両立しないからです。

なお、「履行の請求」と「契約の解除」には債務者の帰責性(債務者の責めに帰すべき事由)は必要ありませんが、「損害賠償請求」には債務者の帰責性が必要とされています。

すなわち、「債務不履行について、債務者側にやむを得ない理由があった場合」には、損害賠償請求はできない、ということです。

金銭債務の特則

「金銭債務」とは、金額の支払いが目的の債務のことです。

金銭債務には、以下のような特則があります。

・無過失責任:債務者に帰責性がなくとも(故意・過失がなくても)債務不履行責任を負います。

・履行不能はありえない:「金銭を調達する手段がない」ということはあり得ないため、必ず履行遅滞となります。

・債権者は損害の照明をする必要がない

・遅延損害金は法定利率と約定利率のうち高いほう

契約の解除

債務者が債務不履行に陥った場合、債権者は相当の期間を設けて債務の履行を催告し、その期間内に履行されない場合は解除をすることができます。

ただし、債務不履行の内容が軽微である場合は、債権者は解除ができません。

また、債務不履行になる理由が債権者の責任の場合も、解除はできません。

催告によらない解除

以下の場合は、催告によらず解除ができます。

・債務の全部の履行が不能であるとき

・債務者が債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき

・債務の一部の履行が不能である場合、または債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき

・契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないまま時期を経過したとき

・催告をしても契約をした目的を達する履行がされる見込みがないことが明らかであるとき

解除権の行使と効果

解除は相手方に対する一方的な意思表示(催告)のみでOKで、一度解除したものは撤回できません。

また、解除権には不可分性があるため、契約当事者が多数の場合、全員から、または全員に対して催告をする必要があります。

解除の効果としては、契約は最初から無かったこととなります。債務者・債権者ともに原状回復の義務が発生します。

解除と第三者の関係

解除前の第三者、解除後の第三者、いずれの場合も第三者が登記を備えている場合は、債権者は対抗することができません。