宅建業法

宅建業法で定められている報酬額の上限(制限)を分かりやすく解説【2022年版】

宅建業法 報酬額の上限

宅建業法で定められている報酬額の上限とは?

こんにちは、トシゾーです。

今回は、宅建業法における「報酬額の上限」について説明します。

報酬額とは、宅建業者が不動産の売買・貸借を代理または仲介した場合の手数料のことです。

そもそもですが、原則として「私人同士の契約内容は自由」という立場に立つと、依頼人と請負人の両者が合意すれば、報酬額はいくらでもよいはずです。

それではなぜ、報酬額の上限が決まっているのでしょうか?

それは「悪徳業者に騙されないように」という消費者保護が目的です。宅建業法全体の考え方でしたね。

不動産会社が上限を超える報酬額を受け取った場合、法令違反になりますので注意しないといけません。

なお、法令で定められているのは「上限」ということで、この金額を超えていなければ仲介・代理手数料を自由に決めることができます。代理や仲介により、売買・貸借が成立した際に報酬を請求できます。

宅建業者が自ら売主として売買が成立したケースでは、取引当事者の立場にありますので買主に報酬を請求することはできません。

売買の仲介における報酬額の上限

それではケースごとに報酬額の上限を見て行きます。まずは「売買の仲介」から。

不動産会社が売買の仲介でもらえる報酬額の上限は、下記のように売買代金における金額区分ごとに定められています。

取引される不動産の金額 報酬額の料率(最大)
取引額が200万円以下の場合 取引額の5%
取引額が200万円を超えて400万円以下の場合 取引額の4%+2万円
取引額が400万円を超える場合 取引額の3%+6万円

上記が「一方の依頼者からもらえる報酬の限度額」となります。まずは上記の公式を覚えて頂き、この公式をベースに他のケースを説明していきます。

報酬額の消費税の扱い

上記の公式には消費税は書かれていませんが、実際には、報酬額は消費税の課税対象です。課税される消費税は、消費税課税事業者と消費税免税事業者で、以下のとおり異なります。

  • 消費税課税事業者:計算した報酬額の10%
  • 消費税免税事業者:計算した報酬額の4%

免税事業者が4%の課税を実施できるのは、不動産の仕入れ時に消費税を支払っているとみなしているためです。

※こちらの消費税の考え方は、以下の取引すべてにおいて共通です。

売主と買主、両方の依頼者の仲介をしている場合

両方の仲介をしている場合、両方から手数料を貰うことができます。その際、「一取引あたりの報酬の限度額」は、上記公式の2倍となります。

例えば、売買価格が1,000万円の土地の報酬額をもらう場合、以下のようになります。

  • 1,000万円×3% + 6万円 = 36万円・・・・一方の依頼者から貰える限度額(税別)
  • 36万円×2 = 72万円・・・・1取引当たりの限度額(税別)

交換の仲介における報酬額の上限

つづいて、「交換の仲介」です。この場合には、交換する2つの宅地建物の価格に差が生じている時に、いずれか高い方を交換に係る宅地建物の価額にするのが特徴です。

これが宅建業法でどのように規定されているのか、具体例を挙げてまとめてみました。

 

  1. A社がX氏と媒介契約を結び、X氏が所有している800万円(消費税額を除外した後)の宅地建物を媒介した
  2. B社がY氏と媒介契約を結び、Y氏が所有している1,000万円(消費税額を除外した後)の宅地建物を媒介し、交換が成立した
  3. このケースではA社の報酬額の上限は800万円ではなく、1,000万円をもとにして計算する

参考:報酬額の制限とは(不動産情報サイト アットホーム)https://www.athome.co.jp/contents/words/term_1138/

交換に係る宅地建物の価額は、建物に係る消費税額を除外しないといけません。※ここでいう消費税額とは、報酬額計算のベースとなる「建物の金額」に係る消費税のことです。報酬額に係る消費税はきちんともらえますので、安心してください。

売買の代理における報酬額の上限

売買の代理では、一方の依頼者から受領できる限度額は、前述の公式の2倍の金額です。

また、1取引あたりの限度額も、前述の公式の2倍の金額です。

ただし、仲介と違い、代理においては「双方代理の禁止」という民法の規定があるので、同一業者が売主および買主双方の代理にはなれませんので、注意してください。

売買の代理の場合の「1取引あたりの限度額」とは、売主・買主にそれぞれ代理業者(別の業者)がついた場合、その2つの業者に払われる報酬額の限度額、という意味になります。

なお、「交換の代理」においても、「売買の代理」と考え方は同じです。

貸借の仲介・代理における報酬額の上限

不動産会社は物件の売買だけではなく、貸借の仲介で利用するケースの方が多いのではないでしょうか。

物件の貸借の仲介・代理においても、当然のように宅建業法で報酬額が受け取れると定められています。

以下では、貸借の仲介・代理でどのくらいの報酬額を上限に請求できるのかまとめてみました。

  • 仲介・代理のいずれも、借賃の1ヵ月分を上限に報酬額を受け取れる(一方の依頼者の上限、一取引あたりの上限いずれも)
  • 居住用として利用する建物の賃貸借の仲介においては、仲介依頼時において、その依頼者の承諾を得ているケースを除き、借賃の1ヵ月分の0.5倍に抑える必要がある
  • 宅地または非居住用の建物の賃貸借の仲介・代理の場合、権利金が授受される時は売買に係る代金の金額と見なされるため、売買の仲介・代理と同様の報酬額を上限まで請求できる

宅建業の仲介手数料以外の費用の取り扱い

不動産の取引における仲介手数料は、売買契約が成立して初めて発生します。

この仲介手数料以外の費用に関しては、依頼者に請求してはいけません。

通常行われる広告費や購入希望者を現地に案内する費用などは、仲介手数料の報酬額の中に含まれています。

ただし、依頼者から特別な依頼があって発生した諸経費については、仲介手数料とは別途で請求できると認められています。

具体的にどのような費用が該当するのか例を見ていきましょう。

  • 依頼者の要望で通常の販売活動では行わない広告宣伝の費用
  • 依頼者の希望で行った遠隔地の購入希望者との交渉の出張旅費

「依頼した側の希望で基づいて発生した」「通常の仲介業務では発生しない費用」「実費である」の3つの条件を満たしていれば、仲介手数料にプラスした報酬額を請求できる仕組みです。

まとめ

以上のように、宅建業法で定められている報酬額の上限や制限についておわかり頂けましたか?

売買・貸借の代理・仲介いずれにおいても、上限を超える報酬額をお客様から請求するのは禁じられています。

法改正で計算式が変わることもありますので、宅建業を営む事業者や宅建士の方は最新の情報をしっかりと確認しておいてください。

著者情報
氏名 西俊明
保有資格 中小企業診断士 , 宅地建物取引士
所属 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション