権利関係

相殺適状の要件は?相殺適状について、わかりやすく解説!

相殺適状の要件は?

相殺とは?

宅建試験の権利関係(民法)では、相殺(そうさい)という用語が出てきます。

日常生活でもたまに耳にしますが、相殺とは貸し借りや損得を互いに消し合ってゼロにすることです。

例えば、AさんとBさんがお互いにお金を貸し合ったとしましょう。

AさんはBさんに対する貸金債権、BさんはAさんに対する貸金債権を有しています。

お互いに貸したお金の金額が同額であれば、AさんはBさんに「債務を消滅させて」と言って債権が相殺されて消滅する仕組みですね。

このケースでは、Aさんの持っている債権が自働債権、Bさんの債権が受働債権になります。

わざわざ同じ金額のお金を交換し合うのは無意味ですので、対立する同種の債権はお互いに帳消しできる制度が認められました。

民法第505条では、「二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。」と規定されています。

参考:民法第505条(WIKIBOOKS) https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC505%E6%9D%A1

ただし、債務の性質がこれを許さない時はこの限りではありません。

相殺の要件は3つ!

相殺と聞くと難しいイメージがありますが、「帳消しにする」「チャラにする」と言い換えることができます。

法律上では、相殺が認められるには次の3つの要件が必要です。

  • 相殺適状にあること(現行民法505条1項):当事者の間で互いに有効かつ同種で、相殺できる性質の債権が対立して双方が弁済期にある
  • 相殺禁止の意思表示がないこと(現行民法505条2項):意思表示は第三者が悪意または重過失で知らなかった時に限り対抗できる
  • 相殺禁止債権に当たらない:不法行為による損害賠償債権(現行民法509条)や差押禁止債権(現行民法510条)に当てはまらない

要件をクリアして相殺が行われると、対立していた債権債務は対当額で消滅します。

相殺の方法は、当事者の一方から相手方に対する意思表示です。

相手方の承諾は不要ですが、意思表示に条件や期限を設定することはできません。

例えば、「他の友人に貸したお金を返してもらったら相殺する」「20日後に相殺する」などです。

相殺禁止事由とは?

相殺禁止事由とは、債務の性質が相殺を許さない時に相殺できない規定です。

具体例を挙げてみると、お互いに協力して実施する作為債務は、債務が現実に履行されないと目的を達成できません。

債務の性質が相殺を許さないものに当てはまりますので、相殺禁止事由になります。

民法上で相殺が禁止されているのは次の3つのパターンですね。

  • 不法行為に基づく損害賠償請求権を受働債権とする場合(民法509条)
  • 扶養料や給料など差押えを禁止された債権を受働債権とする場合(民法510条)
  • 差押え・仮差押えを受けた債権を受働債権とする場合(民法511条)

参考:相殺禁止事由(阿部楢原法律事務所) http://abe-narahara.com/service/komonkeiyaku/credit/544/

旧民法509条では、不法行為に基づく損害賠償債権を受働債権とする相殺が全面的に禁止されていました。

しかし、単なる故意や過失による不法行為は必ずしも当てはまらないため、「悪意による不法行為に基づく」と民法が改正されています。

相殺適状とは?

相殺適状(そうさいてきじょう)とは、相殺の要件が揃った状態です。

相殺が行われた場合には、相殺適状に遡って効力が生じます。

双方の債務がお互いに相殺に適するようになった時と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

上記の項目でも解説しましたが、相殺は相殺適状になった時点に遡って消滅して無かったことになります。

相殺適状の要件

「相殺適状にある」と言える要件は次の4つです。

  • 両者が互いに債権を有していること
  • 両債務が同種の目的を有すること
  • 自働債権(相殺する側の有する債権)の弁済期が到来していること
  • 両債務がその性質上相殺を許さないものではないこと

これは当たり前ですが、相殺を許す債務でなければ相殺適状にあるとは言えません。

例えば、「不法行為によって生じた債権は受働債権として相殺できない」「同時履行の抗弁権が付着している債権を自働債権として相殺できない」と定められています。

自働債権や受働債権との関連

債務を相殺するに当たり、自働債権受働債権という言葉が出てきます。

自働債権は相殺すると言い出した方の債権、受働債権は相殺すると言われた方の債権です。

自働か受働なのかは相対的な概念ですので、事例によって入れ替わります。

上記の項目で軽く解説しましたが、不法行為による債権を受働債権とする相殺は認められていません。

もしこれを認めると、更に不法行為を誘発する原因になりかねないからです。

逆に不法行為を自働債権とする場合は相殺できます。

相殺適状と時効の関係

相殺適状は時効とも深い関係があります。

以下では、相殺適状と時効の関係を具体例を挙げてまとめてみました。

  • AさんがBさんに対して有している5万円の債権は2021年8月1日に消滅時効が完成した
  • 一方でBさんは2021年7月31日にAさんのお店で5万円分の飲食をしてつけ払いにした
  • Aさんは債権を相殺できるのかという問題

消滅時効が完成した後に、「時効だから支払わない」と言えば基本的に代金は請求できません。

しかし、相殺の場合は例外で、民法第508条では「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。」と規定されています。

参考:民法第508条(WIKIBOOKS) https://ja.wikibooks.org/wiki/%E6%B0%91%E6%B3%95%E7%AC%AC508%E6%9D%A1

2021年の7月31日の時点でAさんの自働債権は弁済期にありますので、両者の債権は相殺適状に該当します。

自働債権が時効によって消滅する前ですので、Aさんは債権の相殺を主張できるわけです。

相殺適状と差し押さえ

債権を差し押さえできるのかどうかは、反対債権がどの段階で生じたのかで決まります。

相殺適状と差し押さえについて具体例を見ていきましょう。

  • CさんはDさんからお金を借りた
  • Dさんは生活が苦しくなり、別の友人にお金を借りた
  • Dさんは返済日が来ても友人にお金を返せなかった
  • 友人はDさんのCさんに対する貸金債権を差し押さえた
  • 更にお金が必要になったDさんはCさんからも借りた

友人は貸したお金を回収する目的で差し押さえをしたのにも関わらず、CさんとDさんの間で相殺されては困ります。

つまり、差し押さえた後に反対債権が生じても相殺することはできません。

相殺適状の判例

ここでは、相殺適状に関する平成25年2月28日の判例についてまとめました。

<平成25年2月28日最高裁第一小法廷判決>
判決要旨:既に弁済期の自働債権と弁済期の定めのある受働債権が相殺適状にあるためには、受働債権の期限の利益を放棄できるのに加えて弁済期が現実に到来していることを要する
概要:借主が自己の所有する不動産に設定した根抵当権について、貸付金債権が過払金返還請求債権との相殺で消滅したとして貸主に対して根抵当権設定登記の抹消登記手続きを求める
最高裁の判断:民法で「双方の債務が弁済期にあるとき」と規定されていることにより、自働債権のみならず受働債権についても弁済期が現実に到来していることが相殺の要件とされている

参考:相殺適状に関する最高裁判決(北の丸綜合法律事務所) http://www.saimunoseiri.jp/hanrei/h25228.html

相殺適状のよくある質問

以下では、相殺適状に関するよくある質問をわかりやすく解説していきます。

Q1:消滅時効が完成する前に債権者が債権を相殺できる状態にあった時、債権が時効により消滅した場合はどうなりますか?
A:時効で消滅した債権が時効の完成前に相殺適状であれば、債権者は相殺することができます。

Q2:債権の相殺に何かデメリットはありますか?
A:自分の持つ自働債権の消滅や、領収書や請求書が発行されない点がデメリットです。

まとめ

相殺適状が一体何なのか、要件や時効との関係についておわかり頂けましたか?

双方の債権が相殺適状になった時に、相殺の効力が遡って生じます。

宅建の本試験では債権に関する問題が毎年4問程度出題されますので、法律の概要や論点をきちんと押さえておきましょう。

その他、以下のワンポイントWebテキストも参考にしてみてください。