こんにちは、トシゾーです。
今回は、宅建の「権利関係」科目で学ぶ「先取特権」について説明します。
先取特権をカンタンに言えば、
「ある債権について、他の債権者より先に回収できる!」
という権利です。
この先取特権は、権利関係の中でも民法の「担保物権」の項で学習します。
担保物権は、大きく「約定担保物権」と「法定担保物権」に分かれており、このうち、先取特権は「法定担保物権」の1種となります。
まずは、先取特権の概要から見て行きましょう!
先取特権には3種類ある!
先取特権には、3つの種類があります。
- 一般の先取特権
- 動産に関する特別の先取特権
- 不動産に関する特別の先取特権
以下、それぞれについて説明しましょう。
一般の先取特権
一般の先取特権は、民法306条に定められています。
一般の先取特権には、次の4種があり、これら4種の原因によって生じた債権を持っている場合、債務者の総財産について先取特権を有する、つまり「債務者の全ての財産から、優先的に回収を受ける」ことになります。
- 共益の費用
- 雇用関係
- 葬式の費用
- 日用品の供給
たとえば、「雇用関係」の場合だと、
「会社が潰れてしまって従業員に未払い給与がある場合、他の債務に優先して従業員に給与が支払われる」
というようなイメージです。
※カンタンに言えば、「給料や葬式費用などのお金は、他の事情に比べて優先的に払ってあげたいよね」ということです。
なお、上記4つの間における優先順位は、1~4の順番となります。
動産に関する特別の先取特権
一般の先取特権は、債務者の総財産が先取特権の対象となりますが、特別の先取特権では、は、特定の財産のみが先取特権の対象となります。
動産に関する特別の先取特権においては、以下が対象となります。
- 不動産の賃貸借
- 旅館の宿泊
- 旅客または荷物の運輸
- 動産の保存
- 動産の売買
- 種苗または肥料の供給
- 農業の労務
- 工業の労務
たとえば、上記8番目の「工業の労務」では、その工業の業務によって作られた制作物などだけが、先取特権の対象の財産となります。
また、7番目の「農業の労務」では、その農業の仕事によって得られた農作物などだけが、先取特権の対象の財産となります。
不動産に関する特別の先取特権
次の不動産関連の債権に対し、先取特権が存在します。
- 不動産の保存
- 不動産の工事
- 不動産の売買
上記のように、不動産関連の費用を貸した債権者は、その対象となる不動産を売却した得た金銭等から優先して回収をできるようになります。
担保物権とは?
担保物権とは、債権者が債務者から債務を確実に返済してもらうための仕組みを持つ物権です。
債務者が持つモノに対する所有権に対し、一定の制限をかけるものとなります。
担保物権の特徴
担保物権には、次の4つの性質があります。
- 付従性
- 随伴性
- 不可分性
- 物上代位性
以下、それぞれを見ていきましょう。
付従性
そもそも、担保の目的となる債権がなければ担保物権は発生せず、また、その債権が消滅すれば担保物権も消滅してしまう、という性質です。
随伴性
担保の目的となる債権が譲渡などにより移転した場合、担保物権も一緒に移転する、とう性質です。
不可分性
債権のうち一部を弁済してもらっても、全て弁済を受けるまでは、目的物のすべてに対して担保物権の効力が及ぶ、ということです。
前述の「留置権の具体例」でいえば、「修繕代金の半額を大家さんから支払ってもらっても、アパートの部屋を半分明け渡す必要はない」というイメージです。
物上代位性
担保物権の目的物が売却、賃貸、滅失などにより、売上・賃貸料・保険金などに価値を換えたとしても、その新しい価値に対して差し押さえなどができる権利です。
法定担保物権とは?
「法定担保物権」とは、法律の規定において当然に成立する担保物権のことで、先取特権と留置権が該当します。
約定担保物権とは?
「約定担保物権」とは、成立するためには当事者間の契約(合意)が必要な担保物権のことで、抵当権と質権が該当します。
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その他、以下のワンポイントWebテキストも参考にしてみてください。
<宅建業法>
<権利関係>
<法令上の制限>
著者情報 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 , 宅地建物取引士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |