宅建の従業者証明書とは?
宅建の従業者証明書については、宅建業法48条1項および2項に、次のように定められています。
第四十八条 宅地建物取引業者は、国土交通省令の定めるところにより、従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、その者をその業務に従事させてはならない。
2 従業者は、取引の関係者の請求があつたときは、前項の証明書を提示しなければならない。
引用:宅建業法(e-gov)
宅建業に従事する者は、従業者証明書を業務に従事してはなりません。これは、宅建業者の経営者であっても同様です。
従業者に対し、従業者証明書を所持(携帯)させるのは宅建業者(経営者、社長)の義務です。そのため、従業者が従業者証明書を携帯せず従事した場合、使用者である宅建業者は50万円以下の罰金に処せられます。
また、2項にあるとおり、宅建業の従業者は取引先の関係者から請求があった場合、従業者は、自分自身の証明書を提示する義務があります。たとえ宅建士であっても、宅建士証では従業者証明書の提示義務を果たしたことにはならないのです。なぜなら、宅建士証だけでは、その業者に所属する宅建士かどうか分からないからです。
もちろん、名刺・記章などを提示することで、従業者証明書の代わりになることもありません。
宅建の登録講習を受ける際にも従業者証明書は必要
宅建の登録講習とは?
登録講習とは、宅建業に従事する従業者のみが受講できる講習のことで、この講習を受講することで、宅建試験における問題の一部(5問)を免除されるものです。
5問免除される(=5点分が正解扱い)ことは、宅建試験において非常に有利です。そのため、宅建業者の従業員で宅建試験を受験する方の多くが、登録講習を受講します。
宅建業に勤めて間がない方でも、従業者証明書が発行されていれば登録講習を受講できます。
※登録講習の詳細については、下記の記事をご覧ください。
宅建試験の5問免除(5点免除)とは?
上記のとおり、宅建の登録講習のメリットは、宅地建物取引士資格試験で5点が免除されるところです。
宅建試験の4分野(権利関係、宅建業法、法令上の制限、税・その他)のうち、「その他」にあたる部分が免除されます。
具体的には、試験問題50問のなかの問45~問50の部分であり、次のとおりです。
- 問46 住宅金融支援機構
- 問47 景品表示法
- 問48 統計
- 問49 土地
- 問50 建物
※5点免除に関して詳しくは、下記の記事を参考にしてください。
従業者名簿とは?
宅建の従業者名簿については、宅建業法48条3項および4項に、次のように定められています。
3 宅地建物取引業者は、国土交通省令で定めるところにより、その事務所ごとに、従業者名簿を備え、従業者の氏名、第一項の証明書の番号その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならない。
4 宅地建物取引業者は、取引の関係者から請求があつたときは、前項の従業者名簿をその者の閲覧に供しなければならない。
引用:宅建業法(e-gov)
従業者名簿には、以下の内容を記載しなければなりません。
- 従業者の氏名
- 生年月日
- 主たる職務内容
- 宅建士であるか否かの別
- 当該事務所の従業者になった日(年月日)
- 同事務所の従業者でなくなった場合は、その日(年月日)
また、従業者名簿の保存期間は10年間です。
なお、取引関係者から要求があった場合、従業者名簿を閲覧させなければなりません。
この閲覧させる義務は従業者名簿のみであり、帳簿には閲覧義務はありません。
従業員名簿は、宅建の事務所に備えておくべき5点セットの1つ
従業者名簿は、宅建業の事務所に備え付けておくべき5点セットの1つです。
※宅建試験対策上は、5点セットに「宅建業免許証」は含まれないことを確認しておいてください。
事務所に備え付けておくべき5点セットについては、次項で説明します。
【参考】従業者名簿は、宅建業者の事務所に備えるべき5点セットの1つ
従業者名簿は、宅建業者の事務所に備えるべき5点セットの1つです。
5点セットとは、以下のようなものです。
それぞれの事務所ごとに、以下の5つの物を備えておかなければなりません。
従業者名簿
宅建業者は、それぞれの事務所に従業者名簿を備えなければなりません。
従業者名簿は、パソコンの記憶装置などで管理することができます。
標識
宅建業者は、事務所内の目に付きやすい場所に標識を掲示する義務があります。
報酬額
宅建業の代理・媒介の場合の報酬額は、国土交通大臣が定めています。
その報酬額の表を、それぞれの事務所に掲示する必要があります。
なお、自社物件の分譲が専門の宅建業者には、代理や媒介は無関係ですが、その場合でも、報酬額を掲示することが定められています。
※宅建業の報酬額については、次の記事も参考にしてください。
専任の宅建士
宅建業者は、事務所ごとに5人に1人以上の割合で、成年者かつ専任の宅地建物取引士(宅建士)を置かなければなりません。
「成年者」について
「成年者」の定義には、「20歳未満で婚姻している者(成年擬制)」も含まれます。
「専任」について
専任とは常勤者であることをいいます。複数の事務所に雇われている宅地建物取引士では、専任とはいえません。
「5人に1人の以上の割合」について
たとえば、12人の社員がいる事務所では、3名の専任の取引士が必要です。
また、退職などの理由で、専任の取引士が必要な人数に満たなくなった(欠員の)場合には、補充を2週間以内することが求められています。
※間に合わなかった場合は、業務停止処分となることがあります。
帳簿
宅建業者は、事務所ごとに取引を記録した帳簿を備えなければなりません。
帳簿は、紙で管理する他、パソコンの記憶装置などで管理することも可能です。
帳簿には、5年間の保存義務があります。なお、自社が販売する新築住宅に係る帳簿の保存期間だけは10年となっています。
※5点セットについては、次の記事も参考にしてください。
著者情報 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 , 宅地建物取引士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |