宅建免許の基本
土地や建物の売買や賃貸の仲介を行う宅地建物取引業を営むに当たり、都道府県知事または国土交通大臣に免許を申請しないといけません。
個人でも法人でも、免許を取得した者でないと宅地建物取引業を営めないと法律で定められています。
不正の手段で宅地建物取引業の免許を受けたり無免許で宅地建物取引業を営んだりすると、3年以下の懲役または100万円以下の罰金の処罰を受けます。
なぜ宅地建物取引業の経営で免許が必要なのか、いくつかの理由を見ていきましょう。
- 国民の大切な財産である宅地や建物を取り扱う仕事
- 売買や取引の物件価格は高額になりやすい
- 全ての手続きにおいて高度な専門性が要求される
宅建免許の取得は、事務所の所在地の場所によって業者が国土交通大臣か都道府県知事か変わります。
例えば、東京都で開業するのであれば、東京都知事から宅建免許を受ける形になります。
しかし、不動産に関する全ての業種で宅建の免許が必要なわけではありません。
免許を要する宅地建物取引業は、下記の表で○がついている取引を反復または継続して行うことを指しています。
<自己物件>
売買:○
交換:○
貸借:×
<他人の物件の代理>
売買:○
交換:○
貸借:○
<他人の物件の媒介>
売買:○
交換:○
貸借:○
自らが家主として不動産の賃貸を行う場合以外の不動産に関する取引を継続するのであれば、宅建免許が必要というわけですね。
宅建免許は大きく2種類!
宅地建物取引業の免許は、大きく次の2種類にわけることができます。
- 2以上の都道府県に事務所を設置して営業する場合は「大臣免許」
- 1の都道府県のみに事務所を構えて営業する場合は「知事免許」
事務所を設置する都道府県の数で宅建免許の種類が変わりますので、事務所が2ヵ所以上でも1つの都道府県内であれば知事免許の取得でOKです。
宅建免許の申請を受ける要件をまとめてみた
宅建免許を申請するに当たり、次の3つの要件を最低限クリアしないといけません。
- 宅地建物取引士を設置している
- 事務所の形態を整えている
- 欠格事由に該当しない
それぞれの項目を詳しく説明していますので、宅建免許を申請する前に目を通しておきましょう。
宅地建物取引士を設置している
不動産業を開業して免許を申請するには、専任の宅地建物取引士を5人に1人以上の割合で所属させる必要があります。
宅建試験の合格後になれるのが宅地建物取引士で、主な仕事内容を挙げてみました。
- 宅地建物の取引の契約締結を行う際に重要事項説明をする
- 宅地建物の取引の契約締結後に交付する書類に署名や押印をする
- 土地や建物を購入したり借りたりしたい人に合う不動産を探して仲介する
- 土地や建物の売主や買主の仲介を行い、契約までのサポートを行う
- 不動産や資産の運用をコンサルティングする
宅地建物取引士には重要事項説明や署名・押印など有資格者だけが行える業務がありますので、宅建免許の申請で設置が義務付けられているわけです。
専任の宅地建物取引士が不足した場合は、2週間以内に補充などの措置を取らないといけないので注意しましょう。
事務所の形態を整えている
宅建免許の申請では宅地建物取引士の設置だけではなく、事務所の形態を整えているのかどうかも大事です。
事務所と言っても、オフィスをただ用意すれば良いわけではありません。
専用の出入り口を作ったり独立した事務所スペースを設けたりと、不動産の経営に相応しい形に整えた事務所を用意すべきだと免許取得の要件で定められています。
事務所の在り方は、不動産業の経営で欠かせない宅地建物取引業免許の取得に関わる大きな問題なのです。
もちろん、開業する時だけではなく営業してお客様と接する上で重要なポイントですので、慎重に事務所を選びましょう。
欠格事由に該当しない
何かしらの欠格事由に該当する場合は、宅建の免許を受ける資格がないと見なされます。
具体的にどのような内容が欠格事由に該当するのかまとめてみました。
- 破産手続きの開始決定を受けている
- 宅地建物取引業で不正な行為をする恐れが明らか
- 事務所に専任の宅地建物取引士を設置していない
- 免許の不正取得や業務停止処分違反をして免許を取り消された
- 不正不当行為または業務停止処分違反をした疑いがある
- 禁錮以上の刑または宅地建物取引業法違反等で罰金の刑に処せられた
- 免許を申請する5年以内に宅地建物取引業で不当な行為を働いた
宅建免許の欠格事由は法律で細かく規定されていますので、開業する前に目を通しておいた方が良いでしょう。
欠格事由の詳細については、次の記事も参考にしてください。
宅建免許の登録や申請の流れをまとめてみた
このページでは、宅建免許の登録や申請の大まかな流れをまとめていきます。
申請から免許通知までは4週間~6週間の期間を要しますので、これから不動産業を開業する予定の方は事前準備を怠らないようにしてください。
宅建業申請書類を作成する
宅建免許の申請では、次の書類を用意する必要があります。
- 免許申請書(様式第1号)
- 事務所写真台紙
- 宅地建物取引業者名簿登載事項変更届出書
- 宅地建物取引業者免許証書換え交付申請書
これらの中でも宅建業申請書類が大事で、「申請者」「商号または名称」「代表者または個人に関する事項」「役員に関する事項」「事務所に関する事項」を記載します。
宅建業申請書類のフォーマットは、行政庁のホームページで入手可能です。
必要な申請書類の詳細は、こちらのページをご覧になってください。
※参考:http://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.jp/sinsei/491menkyo00.htm
宅建業の免許を申請する
宅建業の免許申請に必要な書類を用意した後は、行政窓口で申請手続きを行います。
行政庁によって、手数料をその場で現金納付したり証紙・印紙で納付したりと様々です。
手数料に関しては、知事免許と大臣免許で次の違いがあります。
- 宅地建物取引業者免許申請(知事免許)は33,000円
- 宅地建物取引業者免許申請(大臣免許)は90,000円
手数料の納付方法を事前に確認し、誤った印紙などを無駄に購入しないように注意しましょう。
免許の審査を受ける
宅建免許の申請をした後は、審査を受ける形になります。
審査の期間は書類を受け付けてから約30日で、審査を受ける上での注意点をまとめてみました。
- 書類の不備が見つかった時はその箇所の補正や追加提出を求められる
- 欠格要件に該当する場合は拒否される場合がある
- 申請内容に変更が生じた場合は原則的に申請が取り下げられる
事務所の形態や写真は追加提出が求められやすい部分ですので、事前にきちんと確認しておくべきです。
宅建業免許が通知される
審査を無事にクリアすると、宅建業免許が通知されます。
申請者の事務所本店宛に免許通知が送られてきますので、ハガキの内容を良く確認しておきましょう。
この時点で宅建の免許証の発行の準備が整ったと考えてOKです。
営業保証金の供託または保証協会に加入する
宅建業の免許が通知されても、すぐに業務を開始できるわけではありません。
宅建業の業務をスタートするには、次の2つのどちらかを選ぶ必要があります。
- 営業保証金の供託を行う(本店で1,000万円、支店で500万円)
- 保証協会に加入する(本店で60万円、支店で30万円)
営業保証金の供託では高額な費用がかかりますので、負担を抑えるために保証協会に加入する事業者が多いですね。
保証協会に加入する場合は、免許通知ハガキの到着を連絡し、協会の指示に従って手続きを進めていきます。
なお、保証協会に入会するためには、宅建協会とセットで入会する必要があります。
宅建協会/保証協会に入会するメリットとデメリットは、こちらのページをご覧になってください。
宅地建物取引業免許証が交付される
全ての手続きが終わると、宅地建物取引業免許証が交付されます。
営業保証金を供託する場合は不動産課免許係、保証協会に加入する場合は保証協会経由で宅地建物取引業免許証が交付される仕組みです。
免許の申請が終わって宅地建物取引業免許証が交付されると、不動産業の営業が可能な状態になります。
宅建業の免許の申請で何かわからないことがある方は、司法書士や行政書士などの専門家に相談してみましょう。
宅建免許の更新手続きは必要なの?
宅建業の免許は、一度申請して取得すれば良いわけではありません。
宅建免許は5年間おきに更新が必要で、有効期間が満了する90日前から30日前までに所定の手続きをすべきだと法定されています。
既に免許を取得している分、要件を整える作業は必要なく更新の手続きができるでしょう。
しかし、宅建免許の更新で押さえておきたいポイントがいくつかありますので、一度チェックしておくべきです。
- 長期間に渡って営業実績がなかったり問題があったりする場合は、今後の事業計画について問われる
- 事務所や代表者、取引主任者に変更があった場合は届出の手続きを行う
- 免許申請時以降に欠格事由に該当していないか確認する
所定の期間までに更新の手続きをしないと、免許が失効になって宅建業を営むことができなくなりますので気を付けてください。
まとめ
宅建業の免許が一体何なのか、申請の手順や更新の手続きについておわかり頂けましたか?
宅建業法の目的は購入者の利益の保護と宅地建物の流通の円滑化で、無免許営業に関しては厳しく規制されています。
免許なしで営業することはできませんので、どのような手続きで宅建免許を申請できるのかきちんと押さえておきましょう。
著者情報 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 , 宅地建物取引士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |