今回は、「宅建業法上の事務所」に関してお伝えします。
宅建業法においては、免許を申請する前に、事務所を設置しておく必要があります。
また、事務所に必ず備えておくもの(5点セット)なども、法で決められています。
業者にとっては、色々と細かい規定のように思われるかも知れませんが、どれも消費者保護のための大切な事項です。
そのような事務所に関する決まり事を、ご一緒に見ていきましょう。
宅建業法上の事務所とは
宅建業法上の事務所とは、以下の3点が該当します
- 本店(主たる事務所)
- 支店(従たる事務所)
- 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、宅建業の契約を締結する権限を持つ使用人を置く場所
①本店
本店(主たる事務所)は、その事務所で宅建業を営んでいなくても「宅建業法上の事務所」に当たります。
宅建業を営んでいるのが支店だけであっても、本店は支店を管轄する立場にあるからです。
②支店
一方、支店(従たる事務所)は、「宅建業を営む事務所」のみが「宅建業法上の事務所」になります。
たとえば、マンション管理のみを行う支店は、「宅建業法上の事務所」には当たりません。
事務所に据え置くもの(5点セット)
それぞれの事務所ごとに、以下の5つの物を備えておかなければなりません。
標識
宅建業者は、事務所の見やすい場所に標識を掲示しなければなりません。
報酬額
宅建業における代理や媒介の場合の報酬額については、国土交通大臣によって定められています。
その報酬額の表を、それぞれの事務所に掲示する必要があります。
なお、自社物件の分譲が専門の宅建業者には、代理・媒介は関係ないでしょう。しかし、その場合でも、報酬額を掲示することが定められています。
専任の宅建士
宅建業者は、それぞれの事務所において、従業者5人に1人以上の割合で、成年であり、かつ専任の宅地建物取引士(宅建士)を置かなければなりません。
「成年者」について
「成年者」の定義には、「20歳未満で婚姻している者(成年擬制)」も含まれます。
「専任」について
専任とは常勤者であることをいいます。複数の事務所に雇われている宅地建物取引士では、専任とはいえません。
「5人に1人の以上の割合」について
たとえば、12人の社員がいる事務所では、3名の専任の取引士が必要です。
また、退職など、専任の取引士に欠員が生じた場合、2週間以内に欠員を補充する必要があります。
補充が間に合わなかった場合は、業務停止処分となってしまう場合があります。
帳簿
宅建業者は、sれぞれの事務所に取引を記録した帳簿を備えなければなりません。
帳簿は、紙で管理する他、パソコンの記憶装置などで管理することも可能です。
帳簿には、5年間の保存義務があります。なお、自社が販売する新築住宅に係る帳簿の保存期間だけは10年となっています。
従業者名簿
宅建業者は、従業者名簿についても、それぞれの事務所に備える必要があります。
従業者名簿も、帳簿と同じくパソコンの記憶装置などで管理することができます。
従業者名簿の保存期間は10年間です。
なお、取引関係者から要求があった場合、従業者名簿を閲覧させなければなりません。
この閲覧させる義務は従業者名簿のみであり、帳簿には閲覧義務はありません。
案内所等
登記された本店・支店以外にも、案内所やモデルルームなどを設けることがあります。
これらは「案内所等」とされ、宅建業法において、以下の規制がされています。
専任の取引士の設置
案内所等のうち、契約締結や申し込みを受ける場所では、専任の取引士を置く必要があります。
人数は1名以上とされています。
契約や申し込みの受付を行わない案内所等においては、専任の取引士の設置は不要です。
標識
契約・申し込みをする・しないに関わらず、すべての案内所等には、標識の設置が必要です。
その他
事務所には「標識・報酬額・専任の取引士・帳簿・従業員名簿」の5点の備え付けが必要でしたが、案内所等で義務付けられているのは、上記のとおり2点または1点のみとなります。
なお、物件の所在地にも標識は設置する義務があります。
著者情報 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 , 宅地建物取引士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |