宅建と建築士の仕事内容の違い
宅建と建築士は、あらゆる種類の資格の中でも確かな人気があります。
どちらも不動産業界で必須な資格であるため、就職や転職を有利に進められるのが理由ですね。
どちらも不動産や物件と深く関わっていますが、宅建と建築士では下記のように仕事内容に違いがあります。
- 宅建士は不動産に関する専門知識を持ち、お客様に対して重要事項を説明したり書類に記名したりするのがメインの業務
- 建築士は建物を設計やデザインを行い、お客様の要望に合わせて造るのがメインの業務
宅建士と建築士では活躍のフィールドが異なるわけです。
宅建と建築士の資格のダブルライセンスをおすすめする理由はこれだ!
宅建士と建築士は、全く異なる資格ではありません。
転職を有利にしたりスキルアップしたりするために、宅建と建築士のダブルライセンスを目指す方は増えています。
そもそも、ダブルライセンスとは、仕事の相乗効果を高める目的で2種類の資格を取得することですが、
宅建士と建築士は相性の良い資格ですので、ダブルライセンスには大きな価値がありますよ。
ここでは、宅建士と建築士の資格のダブルライセンスをおすすめする理由を解説していますので、「なぜ2つの資格の相性が良いのか」と疑問を抱えている方は参考にしてみてください。
試験範囲で被る部分がある
宅建士と建築士は試験範囲で被る部分がありますので、試験対策を効率良く進められます。
以下では、宅建士と二級建築士の試験範囲の違いをまとめてみました。
- 宅建士:「宅建業法」「権利関係(民法)」「法令上の制限」「税・その他」
- 二級建築士:「学科I(建築計画)」「学科II(建築法規)」「学科III(建築構造)」「学科IV(建築施工)」「設計製図」
宅建試験の宅建業法の「宅地建物取引業法」、権利関係の「区分所有法」、法令上の制限の「建築基準法」「都市計画法」、税・その他の「建物」「宅地」は建築士の試験範囲と重複しています。
建築に関わりがある分野は二級建築士の試験対策で学習が進みやすいため、得意分野から攻めるのが良いでしょう。
また、宅建士と建築士のダブルライセンスを目指すのであれば、二級建築士からスタートするのが一般的です。
二級建築士の資格を取得した後に、更なるステップアップを目指したいなら一級建築士にチャレンジしてみてください。
試験範囲で被る部分はあるのですが、残念ながら「どちらかの科目を取得済みの場合、一方の試験の一部の科目が免除になる」、いわゆる「科目免除」はありません。
仕事の関連性が非常に高い
宅建士と建築士のダブルライセンスがおすすめなのは、仕事の関連性が非常に高いからです。
宅建士の不動産資産に関する知識と、建築士の建築物の全般知識は不動産業界と建築業界の両方で重宝されます。
具体的に宅建士と建築士の両方の資格を持つことで、どのように仕事を進められるのか見ていきましょう。
- 建築士として建造物(例:大型商業施設等)の設計に携わる場合
- 建築物の設計やデザインの技術力は必要(建築士の資格)
- 更に融資先の銀行との連携や税金対策に関する知識が必要(宅建士の資格)
- 宅建士と建築士の知識を併せ持っていると、技術的な提案に加えて法律や税金面のサポートができる
- 顧客やクライアントの満足度が更に高くなる
「建築のプロ」+「法律面のプロ」という人は、顧客からも信頼されやすくなります。
活躍の場所や仕事の幅が大きく広がりますので、宅建士と建築士のダブルライセンスは相性が良いわけです。
転職活動においても有利に働く
宅建士と建築士のダブルライセンスは、転職活動においても有利に働きます。
「この2つの資格は不動産業界や建築業界でしか役立たないのでは?」とイメージしている方はいませんか?
しかし、不動産資産を担保に融資する機会が多い金融業界や、店舗出店の際に知識を活用できる飲食・物販業などの小売業界への転職で他の求職者と差別化を図れます。
「難しい試験に合格した」という努力は認められますので、転職の武器が欲しい方も宅建士と建築士のダブルライセンスを目指してみましょう。
独立開業する際に役立つ
専門的な国家資格を取得し、独立したいと考えている方はいませんか?
独立開業するに当たり、宅建士と建築士のダブルライセンスは役立ちますね。
不動産屋で建築士の資格は必要ありませんが、建築士の仕事をメインで行う際には上記の項目で解説したように宅建士の知識が重宝するのです。
独立開業して成功するには、何よりもまず顧客やクライアントを確保しないといけません。
お客様から信頼される建築士であれば仕事をどんどん獲得することができますので、宅建士の知識も持ち合わせていた方が良いのです。
資格のスクールや通信講座の中には、宅建士と建築士の両方を目指すコースやカリキュラムが用意されたところがあります。
宅建士と建築士には資格の保有者(ホルダー)にしかできない独占業務が存在しますので、ダブルライセンスでスキルアップを目指してみてください。
宅建と建築士の試験の難易度が高いのはどっち?
宅建士と建築士の両方の資格を取得するに当たり、どちらの難易度が高いのか気になるところですよね。
しかし、「○○○の試験の方が難易度が高い」と一概に説明することはできません。
それは宅建士が1種類の資格なのに対して、建築士は次のように様々な種類にわけられるからです。
- 一級建築士:木造や鉄筋の違い、建物の高さなど全ての建築物を設計したり管理したりできる最上位の資格
- 二級建築士:建築士法で定められている建物の設計や工事、管理ができる資格
- 木造建築士:木造の建築物に対して設計やデザイン、工事や管理ができる資格
建築士の資格試験は、「木造建築士」⇒「二級建築士」⇒「一級建築士」の順番で難しくなります。
ここでは、宅建と建築士の難易度を考えるうえで参考にするために、それぞれの試験の合格率がどのくらいなのかデータを見てみましょう。
試験年度 | 宅建士の合格率 | 木造建築士の合格率 | 二級建築士の合格率 | 一級建築士の合格率 |
---|---|---|---|---|
2015年度 | 15.4% | 27.3% | 24.3% | 12.6% |
2016年度 | 15.4% | 35.5% | 21.5% | 12.4% |
2017年度 | 15.6% | 40.1% | 25.4% | 12.0% |
2018年度 | 15.6% | 35.8% | 24.3% | 10.8% |
2019年度 | 17.0% | 30.7% | 25.5% | 12.5% |
木造建築士と二級建築士は、宅建士よりも合格率が高くなっています。
宅建士と一級建築士は合格率の数値に大きな差はないものの、一級建築士の方が少々低いですね。
しかし、一級建築士の試験に合格するには、学科試験と設計製図の試験の両方を突破しないといけません。
宅建士は一発の試験で合格基準点を超えるだけでOKですので、一級建築士の方が難易度が高いと判断できます。
もちろん、どちらの試験も簡単に合格できる国家資格ではありませんので、念入りな対策を行ってください。
宅建の建築士の試験に合格するまでの勉強時間で比較してみた
以下では、宅建士と建築士の試験に合格するまでの勉強時間を比較してみました。
- 宅建試験の合格までの目安は約300時間
- 二級建築士試験の合格までの目安は約400時間~500時間
- 一級建築士試験の合格までの目安は約800時間~1,000時間
これはあくまでも目安ですし、勉強時間は勉強の方法によっても変わります。
しかし、宅建士の試験と比較してみると、二級建築士と一級建築士の試験に合格するまでには長い時間がかかるのが特徴です。
どちらの建築士の試験も、学科に加えて設計製図の対策も同時に行わないといけません。
初学者が独学で取り組むには少々ハードルが高いため、資格スクールに通ったり通信講座を利用したりする方法がおすすめですよ。
著名な資格スクールや通信講座では、数多くの受験生を合格させた実績が多数あります。
もちろん、建築士だけではなく宅建士の試験の合格を目指す場合も、効率良く勉強したいなら資格スクールや通信講座を利用しましょう。
宅建と建築士の資格を同時に取得できる?
宅建士と建築士のダブルライセンスを目指すに当たり、どちらの資格を先に取得すれば良いのか迷っている方もいるでしょう。
試験範囲で被る部分がありますので、宅建士と二級建築士の同時取得を目指すのは選択肢の一つです。
この点は個人の考え方によって変わりますので、取得の目的と自分のキャリアに合う選択をしましょう。
例えば、建築学校か建築の実務経験を既に積んでいる方は二級建築士の受験資格を満たしていますので、最初に建築士の資格を取得してから宅建士を目指します。
一方で不動産業界に関連する仕事をしている方は、「宅建士」⇒「二級建築士」という順番でダブルライセンスを狙うのが良いでしょう。
自分の業務に関連した資格を先に取得する方が今の仕事に役立てることができます。
どちらも簡単な試験ではないので、同時に勉強すると両方が疎かになる可能性があります。一つずつ資格の勉強を始めるのがおすすめです。
まとめ
以上のように、宅建士と二級建築士・一級建築士のダブルライセンスについてまとめました。
2つの関連する資格を取得していると、仕事の幅が広がったり転職で有利になったりとメリットがたくさんあります。
土地と建物に関する資格には将来性がありますので、スキルアップのために宅建士と建築士のダブルライセンスを検討してみてください。
著者情報 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 , 宅地建物取引士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |