宅建業法

宅建の欠格事由は難しい?宅建免許の基準や欠格要件を徹底解説!政令で定める使用人は「ひっかけ」に注意?!

土地家屋調査士 解答速報

こんにちは、トシゾーです。

今回は「宅建免許の基準」について、説明していきます。

宅建免許の基準とは、「宅建免許の欠格要件」「宅建免許の欠格事由」などとも呼ばれ、「これらに該当する者には免許は交付しない」、という基準のことです。

また、既存の宅建業者が、これらに該当することになった場合は、免許取り消し処分となる基準でもあります。

そもそも、宅建業者は、高価な不動産などを商品として扱う専門業者ですから、信用のある者にしか、免許を交付して欲しくないですよね。

そのため、宅建免許を交付する基準は、非常に細かく、そして厳しく設定されています。

以下で見るとおり、宅建免許の基準は、全部で15種類と数は多くあります。

そのため、全体的に難易度が低いと言われる「宅建業法」のなかでは、難しい論点の1つになっています。

とはいえ、毎年必ず出題される箇所ですので、ここは避けては通ることができません。

以上のようなこともあり、苦手意識を持つ受験生も多い「免許の基準」ですが、攻略のポイントとしては、

「それぞれの基準が、なぜ設定されているか」

その理由を理解しながら見て行くことです。

詳しく説明していきますので、一緒に確認していきながら、ぜひ得点源にして欲しいと思います。

能力や信用を欠く者

①成年被後見人・被保佐人・破産者で復権を得ない者

「成年被後見人」「被保佐人」とは、認知症や精神上の問題で「判断能力に欠く」「判断能力が著しく不十分な」者のことです。

※「成年被後見人」「被保佐人」について、詳細は「権利関係(民法等)」で学習します。

破産者の場合は、復権すればすぐに免許を受けることができます。

宅建業に関する不正の関連

②免許申請前の5年以内に宅建業に関して不正または著しく不当な行為をした者

免許申請前の5年以内に、宅建業に関して悪事を行った者は免許を受けることが不可能です。具体例の一つとして、「過去5年以内に、宅建業において無免許営業の処分を受けた」などが挙げられます。

③宅建業に関し不正または、著しく不誠実な行為をするであろう恐れが明らかな者

こちらは、かなりアバウトな書き方になっています。

宅建免許権者の裁量を残し、怪しい者を排除するために使われる規定、と考えられるでしょう。

犯罪関連

④禁錮以上の刑に処せられ、刑の執行が終了し、または執行を受けることが無くなった日より5年を経過しない者

禁錮・懲役を受けた場合は、どんな罪でも、刑の執行が終わってから5年は宅建免許を受けることができません。

また、「執行を受けることがなくなった日」とは、「時効の日」のことです。つまり、時効になってからも5年は免許を受けることができません。

なお、執行猶予の場合、執行猶予期間中は免許を受けることができませんが、執行猶予が終われば、すぐに免許を受けることができます。

さらに、有罪判決を受けても、上告や控訴をしている時は免許を受けることができます(罪が確定していないため)。

⑤宅建業法、背任罪、暴力関連等の罪で罰金刑に処せられた者で、刑の執行を修了し、または、執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者

今度は罰金刑です。

罰金は禁錮・懲役より軽い罪ですが、「宅建業法、背任罪、暴力関連の罪」を犯した者は宅建業者にふさわしくない、という考えから、この規定があります。

時効・執行猶予・上告・控訴の際の規定は、基準④と同じです。

なお、本試験において、ひっかけ問題として「業務上過失傷害罪」や「道路交通法違反」で罰金刑を受けた場合が問われることがありますが、これらは暴力関連の罪には当たりませんので、禁錮・調整期の場合のみ基準に抵触します(基準④)。

また、拘留・科料は罰金より軽い刑のため、基準に該当せず、免許を受けることができます。

⑥暴力団員不当行為防止法に規定する暴力団員である者、または暴力団員で無くなった日より5年経過していない者(暴力団員等)

暴力団員等が宅建業者になれないようにするための規定です。

免許取消処分の関連

⑦一定の事由(3種の事由)により免許を取り消され、5年経過していない者

一定の事由(3種の事由)とは、以下のとおりです。

  • 不正の手段によって免許を受けた
  • 業務停止処分に該当し、情状が特に重い
  • 業務停止処分に違反

上記3つの理由で宅建免許を取り消された場合、取り消しの日から5年を経過するまでは免許を受けることができません。

⑧一定の事由による免許取消処分の前に、相当の理由なく廃業等の届出をしたもので、その届出の日より、5年経過していない者

免許取消処分前に廃業の届出をし、免許取消を免れたうえで、改めて宅建免許を受けようとする者がいるかも知れません。

そのような抜け道を塞ぐための基準です。

具体的には、免許取消処分の聴聞の公示日から処分決定の間に廃業等(解散・廃業)をした宅建業者が該当します。

なお、聴聞とは、免許取消処分を決定する前に、業者の言い分を聞くことです。聴聞の公示日とは、その聴聞の実施場所・日時を公にする日のことをいいます。

⑨ 前述の基準⑦と基準⑧において、その宅建業者が法人だった場合、免許取消処分の聴聞公示日の60日前以内に、その法人の役員だった者で、5年を経過していない者

宅建業者である企業が免許取消処分の対象となった場合、その企業は5年間免許を受けることができません。

そこで、その企業の役員が企業を退職し、個人として宅建業免許を受けようとするかも知れません。

こちらは、そのようなズルを防ぐための基準となります。

その企業の免許取消処分の聴聞の公示日の前60日以内に役員だったものは、取消日または届出の日から5年を経過するまで、免許を受けることができません。

なお、ここで言う「役員」とは、役職の名称に関わらず、取締役と同等以上の支配力を有する(と認められる)者が該当します。監査役は含まれません。

免許申請の当事者以外の者に関する基準

⑩未成年者の場合の法定代理人が、前述の基準①~⑨に該当する場合

営業に関し、成年である者と同一の行為能力を有しない未成年の者の法定代理人(法人である場合は役員も含む)が、前述の①~⑨に該当する場合は、その未成年者は免許を受けることができません。

なお、「営業に関し、成年である者と同一の行為能力を有しない未成年の者」とは、親権者などの法定代理人から宅建業の営業の許可を得ていない未成年者のことです。

一方、宅建業の関して営業の許可を得ている未成年の者は、法定代理人の状態に関わらず、免許を受けることが可能です。

また、婚姻している未成年者は成人として扱われる(成人擬制)ので、法定代理人の状態に関わらず、免許を受けることができます。

⑪法人の場合、役員、または政令で定める使用人が前述の基準①~⑨に該当する場合

政令で定める使用人とは、支店長や事務所の代表など、業務上一定の権限を持つ従業員のことです。

法人の場合は、その法人自体・役員・政令で定める使用人のいずれもが、欠格事由に該当しないことが必須となります。

【参考】政令で定める使用人に関する「ひっかけ」

政令で定める使用人については、以下のような「ひっかけ問題」が出題されることがあります。注意してくださいね

【問題】

免許取消処分の聴聞の期日および場所の公示日60日以内にその法人の政令で定める使用人であった者は、取消しの日から5年を経過するまで免許を取ることはできない。

⇒「×」:役員に該当しない政令の使用人は「5年経過しないと免許を取ることができない」立場には該当しません。

⑫個人の場合、政令で定める使用人が前述の基準①~⑨に該当する場合

個人の宅建業者の場合、本人および政令で定める使用人のいずれもが、欠格事由に該当しないことが必要です。

⑬暴力団員などがその事業活動を支配

いわゆる暴力団等のフロント企業を排除するための基準です。

その他

⑭事務所ごとに、法定数の専任の取引士を置いていない場合

事務所ごとに、従業員に5人に1人の割合以上の宅地建物取引士を設置する義務がありますが、これに違反した場合、欠格事由となります。

⑮免許申請書等に虚偽の記載がある、或いは、重要な事実に関する記載がぬけている場合

申請書や添付書類の不備も該当します。

宅建免許の基準(欠格要件・欠格事由) <まとめ>

ここまで、宅建免許の基準を確認してきました。

前述のとおり、苦手意識を持つ受験生も多い部分ですが、、

「それぞれの基準がなぜ設定されているか」

という理由を抑えながら、理解していくことが、攻略のポイントです。

宅建業法は「消費者保護」のための法律であり、「なぜ、そのような業者が欠格になるのか」を考えながら読み進めて欲しいと思います。

著者情報
氏名 西俊明
保有資格 中小企業診断士 , 宅地建物取引士
所属 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション