マンション管理士と管理業務主任者の違いは何?
不動産関連の資格として、マンション管理士と管理業務主任者は代表的です。
マンション管理士は建物の保全や管理運得に関する総合的なアドバイスを行う資格、管理業務主任者は管理会社に所属して受託契約上の説明や管理状況のチェックを行う資格を指します。
試験範囲や試験日が近いこともあり、両方の資格をダブル受験する予定の方も少なくありません。
このページでは、マンション管理士と管理業務主任者の違いについて詳しく解説していきます。
マンション管理士とは?
マンション管理士は、2000年(平成12年)のマンション管理適正化法に基づいて誕生した資格です。
マンションの管理組合の指導・サポートに加えて、住民の相談やコンサルティングにも携わっていますよ。
以下では、マンション管理士の具体的な業務内容をいくつか挙げてみました。
- マンションの管理規約および使用細則の作成
- マンションの大規模修繕計画の策定
- 区分所有者間のトラブル解決へ向けた予備交渉
- マンション管理に関する住民相談受付
マンションでは住民が管理組合を結成し、維持修繕に関する管理を行う必要があります。
この管理組合の運営に対して助言やアドバイスを行うのがマンション管理士の主な仕事です。
マンション管理士の資格を持つ方には、住民にとって快適なマンション暮らしの環境を保つことが求められています。
管理業務主任者とは?
管理業務主任者もマンション管理士と同じで、マンション管理適正化法によって誕生しました。
マンション管理の前提となる管理委託契約の際に、重要事項を説明したり契約書の作成に携わったりします。
管理業務主任者の具体的な業務内容は次の3つですね。
- 管理組合などに対して行う管理事務の報告
- 管理委託業務に関する重要事項の説明
- マンションの設備や組合運営に関するマネージメント
幅広い専門知識で管理組合に対して重要事項の説明や管理事務の報告を行い、マンション管理のマネージメントをしていきます。
どちらも「マンション管理適正化法」に基づく国家資格
上記の項目でも軽く解説しましたが、マンション管理士と管理業務主任者はどちらもマンション管理適正化法に基づく国家資格です。
マンション管理適正化法とは、平成13年に施行されたマンションの管理の適正化の推進に関する法律のこと!
住民の意識の変化やニーズの高まりに応えて、マンションの資産価値を守りながら快適な住環境を提供できるようにとの目的で定められました。
業務内容や立ち位置には違いがありますが、マンション管理士も管理業務主任者もマンション管理に精通する専門家という点では同じです。
両者の立ち位置の違いとは?
マンション管理士と管理業務主任者は、下記のように立ち位置に違いがあります。
マンション管理士と管理業務主任者の立ち位置の違い | |
---|---|
マンション管理士 | 管理組合側(区分所有者や住民側)の立場に立ってアドバイスを行う「住民側のコンサルタント」 |
管理業務主任者 | 管理会社側の立場で管理受託契約に関する説明や報告を行う「管理会社側のエキスパート」 |
似たような資格ですが、対応する相手がそれぞれ異なります。
二分しても十分に業務量がありますので、マンション管理適正化法でマンション管理士と管理業務主任者にわけました。
独占業務の有無の違い
マンション管理士と管理業務主任者の大きな違いとして、独占業務の有無も挙げられます。
独占業務とは、その資格を有する者でなければ携わることのできない業務のことですね。
マンション管理士は独占業務が設定されていません。
一方で管理業務主任者には次の4つの独占業務があります。
- 管理受託契約に関する重要事項説明
- 管理受託契約に関する重要事項説明書への記名・押印
- 管理受託契約書への記名・押印
- 管理事務に関する報告
管理受託契約に関する重要事項説明や書類への記名・押印は、管理業務主任者の資格を持つ方しかできません。
しかし、マンション管理適正化法の改正により、これからマンション管理士にも独占業務ができる可能性は十分にあります。
※マンション管理士の業務独占資格化の可能性についてはこちら!
設置義務の有無の違い
マンション管理士と管理業務主任者は、上記で解説した独占業務の有無に派生して設置義務にも違いがあります。
独占業務のないマンション管理士は、その業務を行うべき設置義務はありません。
一方で管理業務主任者には設置義務があります。
マンション管理業者は管理組合の数に応じて、30の管理組合ごとに1名以上の管理業務主任者を設置する義務あり!
宅建業者に宅建士の設置が義務付けられているのと同じイメージですね。
設置義務のある管理業務主任者は勤務型の資格、設置義務のないマンション管理士は独立開業型の資格だと言えます。
マンション管理士と管理業務主任者の試験制度の違い
マンション管理士と管理業務主任者は、両方とも試験に合格しないと資格を取得できません。
このページでは、マンション管理士と管理業務主任者の試験制度の違いを詳しく解説していきます。
マンション管理士と管理業務主任者 試験制度の概要(出題形式・受験資格等)
マンション管理士と管理業務主任者の試験制度の概要は下記の通りです。
資格 | マンション管理士 | 管理業務主任者 |
---|---|---|
試験の出題形式 | 4肢択一をマークシートで回答 | 四肢択一のマークシート形式 |
試験の受験資格 | 受験に関する資格や制限無し | 受験に関する資格や制限無し |
試験時間 | 2時間で全50問 | 2時間で全50問 |
試験日程 | 11月の最終日曜日 | 12月の第1日曜日 |
試験の出題形式や受験資格など、ほとんどの点において共通していることがわかります。
試験範囲の違い~ほぼ重複しているが、細かい点で異なる
マンション管理士と管理業務主任者の試験範囲は、下記の通りほぼ重複しています。
<マンション管理士の試験範囲>
- マンションの管理に関する法令及び実務に関すること
- 管理組合の運営の円滑化に関すること
- マンションの建物及び附属施設の構造及び設備に関すること
- マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関すること
<管理業務主任者の試験範囲>
- 管理事務の委託契約に関すること
- 管理組合の会計の収入及び支出の調定並びに出納に関すること
- 建物及び附属設備の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整に関すること
- マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関すること
- 上記の4つ以外の管理事務の実施に関すること
全体の試験範囲は共通していますが、マンション管理士は「区分所有法・マンション標準管理規約」の出題数が多い、管理業務主任者は「民法」の出題数が多いなど細かい点で異なります。
マンション管理士の試験を受験する方は、「区分所有法・マンション標準管理規約」の対策を重点的に行いましょう。
試験日の違い~試験日は近い
上記の表でも記載しましたが、試験日はマンション管理士が11月の最終日曜日、管理業務主任者が12月の第1日曜日と決められています。
試験日が近いため、両方の資格のダブル受験は現実的です。
受験者数・合格者数・合格点(ボーダーライン)などの違い
マンション管理士の受験者数・合格者数・合格点(ボーダーライン)は下記の通りです。
試験年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格点 |
---|---|---|---|
2017年度 | 13,037名 | 1,168名 | 36点 |
2018年度 | 12,389名 | 975名 | 38点 |
2019年度 | 12,021名 | 991名 | 37点 |
2020年度 | 12,198名 | 972名 | 36点 |
次に管理業務主任者の試験データを見ていきましょう。
試験年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格点 |
---|---|---|---|
2017年度 | 16,950名 | 3,679名 | 36点 |
2018年度 | 16,249名 | 3,531名 | 33点 |
2019年度 | 15,591名 | 3,617名 | 34点 |
2020年度 | 15,667名 | 3,473名 | 37点 |
受験者数や合格者数で比較してみると、マンション管理士よりも管理業務主任者の方が多いことがわかりますね。
どちらの試験にも免除制度がある
マンション管理士試験と管理業務主任者試験は、どちらにも免除制度があります。
- マンション管理士試験の免除制度:管理業務主任者の合格または移行講習の修了で「マンション管理適正化法」の5問が免除される
- 管理業務主任者試験の免除制度:マンション管理士試験合格者は「マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関すること」の5問が免除される
免除制度が適用されると、他の受験生よりも合格率がアップするわけです。
マンション管理士試験と管理業務主任者試験の難易度の違い
次にマンション管理士試験と管理業務主任者試験を難易度で比較していきます。
勉強時間から見た難易度の違い
管理業務主任者試験に合格するまでの勉強時間の目安は200時間~300時間です。
一方でマンション管理士試験の合格までは、500時間~600時間がかかりますよ。
マンション管理士の資格を取得するには、管理業務主任者の2倍近くの勉強時間が必要です。
合格率から見た難易度の違い
マンション管理士試験と管理業務主任者試験の合格率の違いは下記の通りです。
試験年度 | マンション管理士試験の合格率 | 管理業務主任者試験の合格率 |
---|---|---|
2017年度 | 9.0% | 21.7% |
2018年度 | 7.9% | 21.7% |
2019年度 | 8.2% | 23.2% |
2020年度 | 8.0% | 22.2% |
試験の合格率で比較してみると、管理業務主任者よりもマンション管理士の方が難易度が高いことがわかります。
マンション管理士と管理業務主任者 需要や将来性の観点からは、どちらがおすすめ?
ここでは、マンション管理士と管理業務主任者のどちらがおすすめなのか需要や将来性の観点から見ていきます。
需要が確実にあるのは管理業務主任者
需要で比較してみると、マンション管理士よりも管理業務主任者に軍配が上がります。
なぜ管理業務主任者の需要が高いのかいくつかの理由を挙げてみました。
- 管理業務主任者にしかできない独占業務がある
- マンション管理を受託する会社には管理業務主任者を設置する義務がある
- 試験の難易度やトータルの勉強時間を加味するとコスパが良い
マンション業界や不動産業界において、管理業務主任者は必須の資格と言っても過言ではありません。
将来性はどちらもあるが、独立志向か勤務志向かで資格を選ぶべき
管理業務主任者の方が需要が高いとは言っても、マンション管理士に将来性がないわけではありません。
今も尚マンションの数は増えていますので、マンション管理士と管理業務主任者の両方に将来性がありますね。
「どちらを取得すれば良いの?」と悩んでいる方は、独立志向か勤務志向かで資格を選びましょう。
マンションの管理会社や不動産会社への就職・転職を考えているなら管理業務主任者、将来的に独立する予定の方にはマンション管理士がおすすめです。
マンション管理士と管理業務主任者のダブルライセンス(ダブル受験)には大きなメリットがある
どちらか片方だけではなく、マンション管理士と管理業務主任者のダブルライセンス(ダブル受験)には次の3つのメリットがあります。
- マンション管理に関する豊富な知識を持つ専門家として他者と差別化を図れる
- 独立開業するに当たって顧客からの信頼度アップや営業力強化に繋がる
- 管理会社に勤めている方はキャリアアップに繋がる
2つの資格の試験範囲はほとんど重複していてダブル受験しやすいため、マンション管理士と管理業務主任者のダブルライセンスを目指してみましょう。
まとめ
マンション管理士と管理業務主任者の違いについておわかり頂けましたか?
どちらもマンション管理適正化法の制定で誕生した資格ですが、業務内容や試験の難易度、今後の需要には大きな違いがあります。
両方とも将来性のある資格ですので、マンション管理士や管理業務主任者の合格を目指してみてください。
<マンション管理士 記事一覧>
著者情報 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 , 宅地建物取引士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |