マンション管理士に独占業務はあるの?
不動産関連の資格の中でも宅建は代表的で、「重要事項の説明」「重要事項説明書への記名・押印」「契約書への記名・押印」などの独占業務があります。
独占業務とは、資格を保有している者しか取り扱ってはいけない業務や仕事のことですね。
マンション管理士は国家資格ですが、独占資格はありません。
つまり、理論上はマンション管理士の資格を持っていなくても、マンションの管理に関する業務を取り扱うことはできます。
マンション管理士の業務とは?
マンション管理士を名乗るには、試験に合格して登録する必要があります。
マンション管理士になった後に、どのような業務をこなしていくのか見ていきましょう。
マンション管理士の業務内容 | |
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相談業務 | 管理組合の役員からのマンション管理の相談に対して回答や助言を行う |
運営診断業務 | 管理組合の運営の適法性や適正性を診断して問題点の提案を行う |
立会業務 | マンションの管理や建替えなどの会合に立ち会って説明や質疑対応を行う |
顧問業務 | 日常業務全般や特定の業務についてトータル的な助言や指導を行う |
管理規約に関する業務 | 管理規約を診断し、見直しを行う際は改定案や規約案を作成する |
管理委託契約に関する業務 | 管理委託契約や管理業務仕様の妥当性を診断して問題点の改善や提案を行う |
専門家の立場から管理組合にアドバイスをしたり、マンションの健全な運営をコンサルティングするのがマンション管理士の主な業務です。
マンション管理士に需要や将来性はある?
これからマンション管理士の資格を目指すに当たり、需要があるのかどうか気になっている方はいませんか?
以下では、マンション管理士の将来性について解説していきます。
そもそも、マンション管理士は非常に役に立つ仕事
マンション管理士の需要が高いのは、そもそも非常に役に立つ仕事なのが理由です。
管理組合の役員からの相談に対応するだけではなく、区分所有者間のトラブル解決も行います。
マンションの運営をスムーズに行うことが求められていますので、マンション管理士の存在は欠かせませんよ。
少子高齢化にも関わらず、中古マンションのストック数は増加しており、マンション管理士の業務も増えている
現在では少子高齢化なのにも関わらず、中古マンションのストック数は増加しています。
更に築30年を迎えて老朽化対策が必要なマンションも増えました。
様々な問題で管理組合の運営が難しくなっていますので、マンション管理士の支援が必要不可欠です。
マンション管理士の業務は以前よりも増えていますので、需要や将来性のある資格だと判断できます。
独占業務が無くてもマンション管理士になるメリット
マンション管理士は独占業務が無くても、求められている資格なのは間違いありません。
そこで、マンション管理士になるメリットをいくつか見ていきましょう。
難関国家資格のため信頼性が高まる
独占業務が無くてもマンション管理士になるメリットは、難関国家資格で信頼性が高まるからです。
下記のデータを見ればわかる通り、マンション管理士の合格率はかなり低め…。
試験年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
平成30年度 | 12,389名 | 975名 | 7.9% |
令和元年度 | 12,021名 | 991名 | 8.2% |
令和2年度 | 12,198名 | 1,045名 | 8.6% |
難関資格に合格した方は、マンション管理についての知識や素養があると保障されます。
マンション管理組合の立場に立ってみても、信頼のおける者に管理を依頼したいと考えるのは当然ですよね。
信頼性を高めるには、マンション管理士の資格を取得するのが手っ取り早いのではないでしょうか。
※マンション管理士の詳しい合格率は下記のページで解説しています。
不動産管理会社の社員であれば、社内での評価が高まる
マンション管理士の資格を持っている方は、不動産会社への就職や転職で有利です。
マンション管理士は、区分所有法やマンションの設備など幅広い知識を勉強します。
不動産管理会社としても専門知識を有している人材を求めていますので、マンション管理士を持つ者が歓迎されるわけです。
もちろん、既に不動産管理会社の社員として働いている人にもマンション管理士はおすすめ!
専門的な知識を持っているだけではなく、学び続ける向上心があるとして社内での評価が高まりますよ。
実質的にマンション管理士にしかできない仕事がある
法律上では、マンション管理士にしか行うことができない独占業務はありません。
しかし、住民同士のトラブルの解決は実質的にマンション管理士にしかできない仕事です。
マンションの一般住民は普段仕事に従事していたり高齢者が住んでいたりと様々で、管理組合だけでトラブルに対処できません。
そんな時に重宝されるのがマンション管理士で、マンション管理のプロフェッショナルを専属として置けばスムーズにトラブルに対処できます。
今後もマンションの世帯数は増加が予想されますので、マンション管理士の重要性も高まるでしょう。
独占業務が無いマンション管理士は独立は難しい?
マンション管理士の資格を取得して独立するに当たり、次の3つのメリットがあります。
- 複数の顧問先を持つことで会社員時代よりも大幅に収入を増やせる
- 自分のペースで仕事をしたり得意な業務を選んだりできる
- 人に感謝されることが多くてやりがいを実感できる
しかし、独占業務の無いマンション管理士の独立は決して簡単ではありません。
マンション管理士の独立が難しいと言われているのは、顧客を獲得するまでに長い時間がかかるからです。
今までは不動産会社のネームバリューの効果を使って集客できていても、独立してからは全て自分で行う必要があります。
「実務経験がない」「コミュニケーション能力がない」というマンション管理士は、開業しても中々仕事を獲得できません。
そこで、以下ではマンション管理士が独立するに当たって押さえておきたいポイントを解説していきます。
独立準備をしっかりする~他士業との交流・ネット活用など
マンション管理士の資格を活かして開業するには、独立準備をしっかりとすべきです。
まず最初に、独立開業するに当たってどのくらいの費用が必要なのか計算しましょう。
開業に必要な費用の目安は100万円~300万円で、内訳は下記の通りです。
マンション管理士の開業に必要な費用 | |
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事務所や設備の設置費 | 事務所の初期賃料や敷金、電話やインターネット開設費など |
マンション管理業協会加入料 | 各都道府県のマンション管理士協会の入会金や年会費 |
広告宣伝費 | 自社ホームページの制作や広告掲載の依頼にかかる費用 |
上記の項目でも解説した通り顧客獲得までに時間がかかりますので、軌道に乗るまでのランニングコストも忘れてはいけません。
他にも仕事を確保するために、他士業との交流やネット活用もマンション管理士の独立準備に必要です。
ダブルライセンスで独立成功の可能性が高まる
マンション管理士の独立開業で成功するには、ダブルライセンスもおすすめ!
マンション管理士は、他の資格とのダブルライセンスで相乗効果が生まれやすいですよ。
具体的にどの資格とのダブルライセンスを目指せば良いのかいくつか挙げてみました。
マンション管理士とのダブルライセンスにおすすめの資格 | |
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管理業務主任者 | 管理委託契約における重要事項の説明や管理状況の報告を行う資格 |
宅建(宅地建物取引士) | 不動産の売買や賃貸の仲介を行う不動産系の人気資格 |
賃貸不動産経営管理士 | 賃貸住宅の管理に関する知識や技能、倫理観を持った専門家 |
マンション管理士と管理業務主任者に関しては、試験範囲が重複していますのでダブル受験がしやすいです。
※マンション管理士と管理業務主任者の違いはこちら!
独占業務があれば安泰、という考え方はナンセンス
「独占業務がある資格は安泰」「独占業務のないマンション管理士は不安」という考え方はナンセンスです。
確かに、独占業務資格は社会的需要の高いものがたくさんあります。
しかし、どの資格を取得して仕事を行うにしても、独占業務が全てではないと心得ておかないといけません。
独占業務がある他士業でも競争が厳しいケースは多い
独占業務がある他士業でも、競争が厳しいケースは意外にも多いものです。
資格取得者が増えて競争が激しくなるにつれて、今までと同じ方法では経営を維持できなくなりました。
士業によって違いはありますが、他者との差別化を図るのが重要ですね。
マンション管理士は知識だけでなく、専門性・実務経験・ネットワークこそが差別化ポイント
マンション管理士に関しては知識を有するだけではなく、次の3つで差別化を図るのが独立開業で成功するポイントです。
- 専門性:ニーズに合わせて勉強し、色々な分野に関する専門知識を持つ
- 実務経験:マンションの管理事務に関する実務経験を積む
- ネットワーク:同じ地域で開業する同業者と良好な関係を築く
信頼されるマンション管理士になれば、年収800万円以上も十分に視野に入ります。
これからのマンション管理士に求められること
これからのマンション管理士には、プラスアルファの知識と経験が求められます。
ダブルライセンスで専門知識を増やしたり、実務経験を積んで臨機応変に対応できるようにしたりするのが大切ですよ。
マンションの管理では様々なトラブルに対処するスキルが求められますので、人生経験が豊富な方に向いています。
マンション管理士に独占業務ができる(業務独占資格になる)可能性はある?
今後マンション管理士に独占業務ができる可能性があるのか疑問を抱えている方はいませんか?
結論から言うと、マンション管理士が業務独占資格になる可能性は十分にあります。
例えば、東京都の豊島区では、居住者が快適に住み続けるために豊島区マンション管理推進条例を制定しました。
豊島区マンション管理推進条例では、現在のマンションの管理状況を把握する目的でマンション管理状況届出書の提出が義務化されています。
この流れは全国的に拡大しても不思議ではありませんので、マンション管理士の独占業務の付与も現実的ですね。
22年4月からのマンション管理適正化法の改正について
2022年の4月からは、マンション管理適正化法が改正されてマンション管理計画認定制度が始まります。
マンション管理計画認定制度とは、マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針です。
その影響で難関国家資格のマンション管理士の業務が拡大し、従来とは位置づけが異なります。
つまり、マンション管理適正化法の改正で、マンション管理士が名称独占資格から業務独占資格に変貌を遂げる可能性が高まりました。
マンション管理計画認定制度とは?
マンション管理計画認定制度は、基本的な方針として次の内容を定めています。
- マンションの管理の適正化に関する目標の設定に関する事項
- 管理組合によるマンションの管理の適正化の推進に関する基本的な指針
- マンションの建替えその他の措置に向けたマンションの区分所有者等の合意形成の促進に関する事項
- マンション管理適正化推進計画の策定に関する基本的な事項
参考:マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針(国土交通省)
簡単に解説すると、マンションの管理計画が一定の基準を満たす時に適切な管理計画を持つマンションとして認定を受けられる制度です。
認定の取得により、「管理水準を維持向上しやすくなる」「マンションが市場において評価される」などのメリットがあります。
まとめ
以上のように、マンション管理士は他士業とは違って独占業務がありません。
しかし、住民同士のトラブルの解決など実質的にマンション管理士しかできない業務はありますので、需要のある国家資格なのは紛れもない事実です。
マンション管理計画認定制度のスタートで業務独占資格化の可能性が高まっていますので、今からマンション管理士を目指しても遅くはないでしょう。
<マンション管理士 記事一覧>
著者情報 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 , 宅地建物取引士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |